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プロローグ

猫じゃらし草原の中にぽつんと建つ一軒家の上で、風見鶏がくるくると回った。 紺碧の空に錦糸卵みたいに星が流れると、猫じゃらしもきらきらと輝く。 「新郎、黒柳」 ハチワレ猫が、ぴっしりとしたタキシードの毛並みを撫でつけて咳払いする。 「はい」 黒柳はハチワレ猫の神父を見上げる。 「なんじ、健やかなるときも、病めるときも、新郎白玉のことを愛し続けることを誓うか」 「はい、誓います!」 黒柳は横目で白玉を盗み見る。 白玉のふわふわした焦げ茶の髪が風で揺れる。まだ学生と言われてもおかしくないほどに幼い顔立ちの白玉は、れっきとした成人男性だと黒柳は知っている。 「新郎、白玉」 「は、はいっ」 白玉が少し慌てたように背筋を伸ばして返事をする。 白玉の瞳に望月が映る。 「なんじ、健やかなるときも、病めるときも、新郎黒柳のことを愛し続けることを誓うか」 「はい!誓います……!」 白玉が、長い睫毛を伏せて微かに微笑む。 その横顔があまりにも綺麗で、黒柳は息を飲む。 黒柳は服越しの細い肩を掴むと、白玉の柔らかい唇に自分の唇を重ねる。 わぁ……っと猫じゃらしが歓声をあげる。白鳥は翼を広げて振り続け、リスはクルミを叩いて喜びの音をあげる。 黒柳が唇を離すと、白玉は静かに目蓋を開く。 その瞳は蜂蜜で煮込んだ望月だ。 その頬は紅花が咲き誇っている。 白玉は綺麗だ。 黒柳は、白玉ほどに綺麗なにんげんを見たことがない。 黒柳の瞳に、夜露のような涙が溜まって落ちた。 あぁ、白玉は綺麗だ。 本当に、綺麗だ……。

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