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黒柳
黒柳の髪は真っ黒で、瞳も真っ黒だ。
黒柳は白玉とは違って、背も高くて手も大きい。筋肉だって綺麗についていて、笑うと垂れた目尻が細くなる。それが柳みたいだから、白玉は黒柳が笑う姿が好きだ。
「黒柳、そろそろ帰ってくるかな?」
白玉は白くて長いスツールから飛び降りると、窓の外を覗く。今日は雨で、黄金の猫じゃらしがさわさわと揺れている。
黒柳と白玉が結婚して、今日で二年になる。
結婚記念日には、白玉が黒柳の好物であるミネストローネを作る。
そのかわりに、黒柳が白玉の好物であるウサギ屋の白桃のタルトを買ってくる。
白玉の足元に柔らかい毛並みが触れる。可愛い三毛猫のミケだ。
「なぁ〜うん」
ミケは猫らしくない声で鳴くと、ご飯をくれと催促する。
「はいはい、今あげるから」
白玉は戸棚からガラス瓶に入ったカリカリをミケの皿に移してやる。水を新鮮なものに変えていると、玄関を開錠する音がした。黒柳だ。
リビングのドアを開けて黒柳が入ってくる。黒柳は肩に少しの雨粒をつけて、手にウサギ屋の箱を持って白玉のところへ来る。
「ただいま」
「おかえりなさい」
黒柳はウサギ屋の箱を冷蔵庫にしまうと、白玉を抱きしめる。
白玉はその広い背中に腕を回すと、背伸びをして、黒柳の頬にキスをする。
「ミネストローネ、今年もあるよ」
黒柳の大好きなミネストローネ。付き合った記念日にも黒柳はミネストローネを作るようにと白玉に言った。
だから、白玉も黒柳にウサギ屋の白桃タルトを買ってくるようにと言ったんだ。
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