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「ほら、花火始まっちまうから、行けよ。」
二人を見ないようにしてヒラヒラと手で、行けと合図する。
10年も想い続けていた俺は何て馬鹿だったんだろう。
あの時、しょーちゃんに告白してたら何か変わってたんだろうか。
「浩ちゃん、ここはいいから花火見てくるか?」
おっちゃんが気をきかせて言ってくれるけど、そんな気分じゃねえ。
失恋した日にあの時と同じ場所で花火なんか見れるかよ。
「俺はいいや。こっからでも見れるしな。」
頭に巻いたタオルの結び目をほどき、顔を隠すように頭から被る。
''君がいた夏は遠い夢の中"
懐かしのフレーズが頭の中をグルグルと回る。
顔を上げると打ち上がり始めた花火が小さく見える。
こっからだと、本当に一瞬で空へと消えていく。
あの頃は告白しようかと、ドキドキしながら隣に立って見ていた。
けど、今はーーー。
「花火ってこんな切なかったのな。」
遠くにいても花火の煙で目が痛くて、柄にもなく涙が出る。
打ち上がっては空に消える花火を見ながら脳内では夏祭りの歌が流れて、一人切ない気分でいっぱいになった、今年の夏。
ーーー完ーーー
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