9 / 10
09
「……浩介?」
ついつい、昔のことを思い出していた俺の前を懐かしいヤツが通った。
あの頃よりも短髪で元から明るめの髪の色はそのままで。
顔立ちが前よりも大人びている。
でもーーー。
28の男にしては童顔だ。
そして、何よりも。
浴衣姿があの時の夏を思い出させる。
しょーちゃんが隣にいた、遠い記憶の夏。
ちょうど祭会場に懐かしい、夏祭りぴったりの曲が流れる。
「翔太?どうしたの?」
しょーちゃんの横から現れた浴衣を着た綺麗な子。
あぁ、そうかーーー。
あの時、言えなかったことがこんなにも後悔するなんて思わなかった。
「よっ。久々…これ、やるよ。」
しょーちゃんに渡したのは、線香花火。
花火大会の余韻でたまにやりたいっていうヤツがいるから、何本か用意してる。
「帰ってたなんて、知らなかった。」
そりゃあ、お互い様だ。
俺だって、しょーちゃんにあの頃とは別の彼女がいるなんて知らなかったし。
ともだちにシェアしよう!