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悲しみを胸に沈めたら 1

 翌朝、簡単な荷造りをしたリュックを抱えて始発電車に乗り込んだ創は夜が明けきらぬ空を車窓越しに眺めた。  あいつ自身はどうなのか──昨夜、『青柳』のカウンターで扶桑が言い放ったセリフが頭から離れず眠れなくなったせいで、徹夜に近い状態のままの過酷な出発だった。  今回の総一朗の行動は法事のためだけの帰省じゃない、何かある。扶桑はその真相を知っていながら、創に対しては故意に隠しているのだと感じる。 「今すぐにでも会って確認」と言うからには、メールの返事を待って、部屋でじっとしているわけにはいかないと、創は総一朗のあとを追う決意をしたのだった。  昨夜得た情報によって、総一朗の行く先に関しては信憑性を増したものの、当てずっぽうに向かったところで会える確率は低い。  そうだ、実家に連絡してみようか。天という珍しい苗字ゆえ、電話帳で探せばすぐに見当はつくだろう。  逸る気持ちを抑えつつ、電車を乗り継いだ創はようやくI半島の東の入り口、A駅へとたどり着いた。  総一朗の実家とおぼしき電話番号はすぐに判明した。幸先がいいと喜んだのも束の間、電話口に出た女性──総一朗の姉──の話によると、法事と墓参りは昨日のうちに済ませたらしく、当人は今朝早くに他へ移動してしまったとのこと。  ついでに観光して帰ると話していたそうだが、どこへ行くのか、具体的な場所までは聞いていなかったようで、そうとわかると、創は失意のどん底に突き落とされてしまった。

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