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悲しみを胸に沈めたら 2

 半島とはいっても、とてつもなく広い。これから先、何のヒントもないまま、どこをどう探せば、どこから手をつければいいのかすら、皆目見当がつかなかった。  ガックリと肩を落として歩く。  駅の構内にある観光案内所の前を通りかかると、立てかけられたラックの中に各地の旅行ツアーのパンフレットが並べられている。そのうちのひとつ、『I半島ロマンチックツアー・二人の思い出作りの旅』という恥ずかしくなるような内容の、カップル向けパンフレットが目についた。 「うわ~、すげえ企画。これ見て行くヤツいるのかよ?」  口ではバカにしながらも、つい、そのパンフを手に取った創はそこに掲載されている観光スポットに行ってみようと思いついた。  もしも総一朗だったら、太平洋をエーゲ海に見立ててしまう男ならば、このテの企画に喜んで乗ってくるに違いないし、彼がそれらの場所を訪れている可能性は大いにある。  創はベンチに腰掛けてパンフの検討に取りかかった。  そこには半島の東海岸を巡るルート、あるいは西海岸、南の先端等、幾つかのコースが載っていたが、A市から出発するとなると、東海岸ルートが妥当だろう。  現代美術館にフラワーガーデン、ビーチリゾート、軽井沢辺りを彷彿させる避暑地と、近隣のアートな施設、断崖の海岸線に沿った遊歩道……  今度は地図とにらめっこして、先程の観光スポットのうち、主だった何箇所かをピックアップすると、バスや電車を使って効率よくまわる、彼なりのルートを作成した。

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