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悲しみを胸に沈めたら 3

 総一朗が車で来ていないことは彼の姉に確認済みなので、公共交通機関を使うのは確実だ。だが、自分の考えたルート通りに移動するとは限らないし、どこかで行き違いになるかどうなのかも皆目、見当もつかない。  それでも、せっかくここまで来たのだからと、気持ちを奮い立たせた創はローカル線のホームへと向かった。こうなったら自分の勘に賭けるしかない。  このI半島は全国でも有数の観光地であり、休日には都心から多くの観光客がこの地を訪れる。  ホームには大きな荷物を抱えた家族連れやら、定年後の二人旅を楽しむ老夫婦、リュックを背負ったダサめのカップルなどが旅の始まりに浮かれた様子で電車の到着を待っていた。  それらの人々に混じり、車内に乗り込んで座席に座ると、車輪の軋む音の合間にビニール袋を開けるガサガサとした音が聞こえ、スナック菓子やジュース、コーヒーの匂いなども漂ってくる。賑やかなおしゃべりの渦の中で、独り列車に揺られている孤独感が創を襲った。 (オレ、いったい何やってんのかな。来ない方が良かったんじゃ……)  こんな、あてのない旅は置いてきぼりにされたこの身がなおさらみじめになるだけじゃないかと思うと、創はますます落ち込んでしまった。  やはり、好きになってはいけなかったのだろうか。扶桑の言うとおり、手を引くべきだったのか。  不安と恐れにさいなまれて、唇をかみしめながら、窓の向こうに目をやる。  線路は海を臨み、青い地平線は穏やかにどこまでも続く。  ぽっかりと浮かぶ船、小さな緑を生やした小島、のどかな景色も今の創を癒してはくれなかった。

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