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悲しみを胸に沈めたら 4
幸せを呼ぶはずの旅が却って孤独を深めていくとは……
ほのぼのと暖かく、楽しげな光景がこんなにも辛いものに感じるなんて……
今、ここに彼が居てくれたら、二人で肩を並べて窓の向こうを眺めていたなら、すべてが違って見えるのに……
悲しみを深く胸に沈めて、創は背もたれに身体を預けた。
列車はA市からいくらか南下したところのI市に入り、やがて最寄り駅へと到着した。
ここからはバスルートで巡ることになる。先の観光地を順にまわってみたものの、行く先々で出会うのは列車の中と同じ、楽しそうな家族連れ、グループやカップルばかりで、追い求める人の姿はどこにもなかった。
コンビニで買ったパンをバスの中でかじりながら、次の目的地へ向かう。
今度はいけるかも、という期待と、それとは裏腹な、やっぱり無理だというあきらめ。
バスを乗り継ぐたびに、ふたつの気持ちの割合は次第に変化し、ついにはあきらめが大半を占めるようになってしまった。
入り組んだ断崖に打ち寄せる波が青から紫に、波頭が白からピンクに染まりつつある。
夕暮れの時刻になっても観光客の絶えない遊歩道を進みながら、もしもここで会えなければ、その時はもう帰ろうと創は悲壮な決心をしていた。
この広い土地で、たった一人の男と偶然会えるかも、などという考えが愚かだった。今なら、この時間ならまだ、S駅まで戻る方法はある。
いくらなんでも、このまま会社を辞めたりするわけじゃなし、月曜になれば笑い話で終わるのだ。それでいいじゃないか。
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