112 / 136

激突! 元カレvs今カレ 8

 進歩的な考えの、都会の会社ならいざ知らず、地方の企業ではまだまだ同性カップルへの理解度は低いし、それも十年以上前のことだ。それでも部長という人物は「娘と結婚するのなら、ゲイだ何だと言われていたことは気にしないし、昇進も約束する」とまで譲歩したらしい。  自身の将来を考え、扶桑が出した答えは「総一朗と別れ、部長の娘と結婚する」ことだった。それは自分のためでもあるし、総一朗のためでもあった。彼にも一般男性の人生を歩んでもらいたい、そう考えたのだが、総一朗は別れを承諾したものの、ゲイとしての生き方を捨てることはないと言い、これ以上扶桑の邪魔になってはいけないと思ったらしく、江崎工業への転職を選んだ。 「いくら時代が変わったとか何とか吹聴しても、世間は同性愛者という存在に、寛容になったふりをしているだけ、どこかで後ろ指をさしているんだよ。そして、その事実はあらゆる局面で自分の足を引っ張ることになる。あと十年でどれだけ変わるのかわからないけれど、そんなに期待しない方がいいし、戻れるなら戻った方が身のためだ」  年齢もキャリアも重ねた人生の先輩、そんな男の言うとおりなのだと思う。総一朗も今なら間に合うから戻れと勧めたし、創自身、何度も戸惑い、迷ってきた。  それでも、ハッキリとわかることはひとつ。たとえ何があっても、何と言われようとも、総一朗を失いたくない──

ともだちにシェアしよう!