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23.溢れ*

暖かさを感じながら重い瞼を開く。 視線をやや下に降ろすと変わらずに自身の腕の中で眠っている清。 ただそれだけで安心する。また目を離した隙にいなくなってしまうのではないかと内心気が気でなかった。 清が起きたらこれからの説明をしようと考えながらも今はこの暖かさをこのまま感じていたいと腕の中にいるものを大事に包み込み目を閉じた。 身体に伝わる振動で再び目を覚ましたが清はまだ起きる様子がない。寝顔すら愛おしく思ってしまうなか仕方なく身体を起こし静かに寝室を出た。一通り身支度を整え終わった時寝室から物音が聞こえすぐさま扉に手をかけた。一瞬躊躇いつつ扉を開くと目の前では床にへたり込み戸惑っている清。昨夜の行為で辛いのだろうと抱き上げリビングのソファへと連れて行った。身体がだるいのか抵抗はなく静かにソファに座っている。素早く朝食の用意をテーブルに並べ今日はゆっくり休むように伝えると同時に今後の話を切り出した。 今回の様なことが再び起きるのを避ける為にも送迎をつけること。そして朝の内に指示をして店にも話は付けてあること。 だが清に苦し顏で頼まれ結局はバイト先に挨拶に行きたいという願いを聞き入れることになった。 本当なら大学にすら通わせずここに閉じ込めておきたいというのが本音だ。 そんな思いを抱いていると清からの質問にザワつきを感じる。 『どうして……こんな事を…』 俺はお前への約束を守りたかった。だが今はうまく伝える事ができない。 誤魔化すように俺は背を向け仕事へと出かけた。 近頃は仕事を早々と切り上げたり緊急で持ち場を離れたりなどの行動で部下にも心配されている。香には呆れたような態度までされ色々と感づいていることだろう。怪しげな視線を時折こちらに向けられながらも渡される書類をこなしている。 一息つき外に目を向けると庭の影が伸び暮れつつある様子に気づく。ふと胸ポケットからスマホを取り出し清に新しく持たせたスマホへと通話ボタンを押した。 以前店から連れて行った際に荷物とともに元々持っていたスマホもあったが敢えて新たに用意させ持たせた。幼い姿の清を思い出すたび、何も不自由なく俺が全て与えてやりたいとずっと考えていた。携帯も服も食事も部屋も安心して過ごせるようにと。 鳴り止まないスマホ越しの呼び出し音。あまりにも出ないため何かあったのかとすぐにマンションに待機させている部下へと連絡を飛ばす。数分後にスマホのバイブが鳴った。通話を開始すると電話越しの部下は簡潔に告げる。 『お疲れさまです。工藤です。清さんは現在もお部屋にいらっしゃり特に問題もないとのことですが少々体調がすぐれないご様子でした。医者を手配しようとしましたがご本人は遠慮されたため控えています。』 昨夜のこともあり身体に負担が残ってしまっているのかと悶々と罪悪感が湧き上がってきた。 『分かった。ご苦労だった。』 電話を切り残りの仕事を早急に終わらせ外が暗闇へと変わった頃にマンションへと寄った。扉を開ければリビングの明かりが漏れる。目の前にはソファに浅く腰掛ける清の姿が。その様子に安堵をしゆっくりと隣へと自分も腰掛けた。安心を確かなものに感じたいあまり清を膝の上に抱きかかえる。昼間腕の中で静かに寝息を立てていた時の様に今も俺に身体を預け抱かれていてくれる。それだけで俺は嬉しく。柔らかな髪を撫でながらこの時間をかみしめた。 落ち着いてきたのを感じ取り自分から声をかけた。 なぜ電話に出なかったのか。体調が良くないのか。きになる事は幾つかあったが少しづつ問いかけると清もおずおずと答えてくれた。 なんでもない時間と会話がこの上なく心地いい。穏やかな時間はあっという間に過ぎ腕の中で眠りについた清を寝室に運び共に瞼を閉じた。 数日、そんな変わらない日々を過ごした。いつからかマンションが俺の帰る自宅になる程だった。ただ、少しづつ警戒が解けてきた清の寝顔は俺の理性を毎夜かき乱す。だからか近頃は目覚める前に仕事に向かい、寝静まった頃に帰宅しベッドで眠る姿を確認しながら頭を撫で額にキスをする。ある日眠りながら俺の手に無意識でかすり寄ってきたとき何か夢見が悪いのかとおもい優しく抱きしめた。額、目元、頬、首筋…とキスを落としていきながら『愛している…』とそれが声になってつぶやかれていた事にも気づかず繰り返す。 うっすらと開かれた瞳は仕込まれそうな透明度で開かれた唇が何かを発しようとしたと同時に塞ぎその甘い口へと舌をねじ込んだ。 あっという間に熱を持ち始める体。苦しそうな吐息に少し離れ再び角度を変え絡もうと体を寄せると…。拒絶の言葉と胸を押し返す弱々しい非力に震える手に目を見開き柄にもなく静止してしまっていた。まっすぐと潤んだブルーグレーの瞳を見つめ返し清の言葉の続きを待つ。 どこかでは考えていた。こんな風に監視し連れ去り訳も分からず怯えているかもしれないと、だが近頃の溶けてきた空気にそんな考えから目をそらしていた。それが今、清からの決定的な言葉と共に目の前に突きつけられ動揺してしまう。 清は視線をそらし肩を震わせている。 俺は覚悟を決め体制を直し俺がどうしてお前にこんな風に接するのかゆっくりと伝えた。誰よりもお前だけが大事で離れて欲しくない俺がそばにいる。 だから、拒絶しないでくれ。と密かに深い場所で願った。 次の瞬間聞こえたのは小さい声だったが昔の公園で出会った少年が呼んでくれたように名前を呼ばれた。 心臓を掴まれたように苦しく感じ加減も忘れてただただ清を抱きしめた。あのとき気付いてやれなかったこと助けてやれなかったことをやっと伝えられた。後悔が少し溶けていくように。そして力が抜けた表情で見つめる清に再び顔を寄せ唇を塞ぎベッドに寝かせながら先ほどの続きをするように下へと舌を這わせキスを落とした。 唇が当たるたびにピクリと反応する身体。押し返す力もなく肩に添えられた細い手を包むように握り返し同じように唇を落とし俺の心音を伝わるようにと手を胸に誘導する。以前よりも恥じらいをあらわにする清が俺を誘う。下へと愛撫を繰り返し下半身の割れ目から見える蕾にも唾液を絡め撫でていくと少しづつ塞がれた口が開いていく。甘い吐息と声が耳に届くたびに興奮し逃げるように動いた腰に対し片足を抑え離れないように掴んだ。身体中震えながら力が入らない清の腰を支え硬く立ち上がったソレを中へと滑らせる。内側に触れると熱が直接感じ以前入ったときよりも我慢をしたからか太いソレは締め付けられキツさ感じた。 「清……清っ…。」 今回こそは優しくと言い聞かせながらゆっくりゆっくり腰を動かし中を刺戟する。だがやはり感じやすい清の身体はすでに何度か腰を跳ねさせ達している。だんだんスピードも上げ前立腺と奥を強く打ち付け何度も締め付けられる俺のものも我慢の限界のように中へと射精した。息を切らし抜き出すと清は意識なく荒く呼吸音が聞こえた。抜き出した穴からは濃い液体が中から溢れ出す。小さな身体から溢れる様子は射精した直後の俺を復活させようとするがすぐさま清を抱き起こし浴室へと連れて行き身体を洗った。抱えながら洗っていると自然と下半身のものが清の肌に擦れ再び浴室の中で吐き出してしまった。 ようやく綺麗にし終わりシャツだけ羽織らせ再び整え直したベッドへと清を寝させ俺も休んだ。その日は懐かしい夢を見ながら…。

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