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プロローグ
俺は父親を殺した。
とても簡単だった。お酒を飲みながらソファーでくつろぐ父親の背後にまわり、鈍器で頭を叩く。
それだけで、父親は声も出さずに横に倒れた。叩いた部分から血がジワジワと溢れ出すのが見える。
このまま何もせずにほっとけば、父親は死ぬだろう。最早、父親と呼んでいいのかも分からない。
鈍器を離し、二階の父親の書斎へと向かう。
なぜか心は穏やかだ。
父親の書斎は本だらけ。地面にも散らかっている。そのせいで足場も少ない。
本を蹴りながら、奥にある本棚へと向かう。
本棚にあるボタンを押すと、本棚が自動ドアのように開き、鉄で作られた隠し扉があらわれた。
ポケットに入れていた鍵で、そのドアを開ける。
そこは真っ暗で何も見えないが、手探りでボタンを押し、部屋の灯りをつける。
そこにはベットとトイレがあるだけの空間。窓もなく、空気も悪い。
けれどその空間には一人の少年がいた。
男だが黒い髪は腰まで伸び、白いボロボロな服を着ている。背丈からして、俺より少し下の年齢、つまりは高校生くらいだと考えられる。
少年は俺に気づくと、暗かった瞳に少し光が灯ったようになる。そして近づいてきてくれる。俺も歩み寄る。
けれど少年と俺の間には柵がある。
つまり、少年はこの隠し部屋の牢で過ごしているのだ。
けれど今の俺はこの牢を開けることができる。
この少年が俺の目的。俺が父親を殺した理由。
俺は少年の牢を開けた。
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