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第1話 たぁ子の憂鬱

メイド学校を卒業して、いよいよ配属先に向かう。学んだことを活かすべく、昨日は遅くまで準備をした。高く2つに結んだ髪を揺らして地図と、目の前の建物を何度も見る。  (でっかいなぁ…) 大きなお屋敷を口を開けて見つめる。  もともと裕福ではない、新人メイドのたぁ子はあまりの大きさに固まった。  恐る恐る門のインターホンを押すと、執事の方が迎えに来てその車に乗った。  まずはメイド長にご挨拶を、と案内されたメイド専用のお部屋。  たくさんの人がいると思ったが、たぁ子を合わせて5名しかいないそうだ。  「失礼します!本日より配属になりました!たぁ子です!」  お辞儀をして顔をあげると、大きな目の金髪美少女がドアップでこちらを見ていた。  「わぁ!」  「優子、近いよ」  「レイ子さん!綺麗な子!」  「良かったわね。たぁ子、こちらへおいで」  ロングのメイド服に身を包み、爽やかな笑顔で迎えてくれたメイド長のレイ子。ポニーテールがよく似合っていて頼れる姉御肌な感じが出ていてホッとした。部屋には3人いて、ぺこりとお辞儀しながらレイ子の前に行こうとすると、突然足をかけられ転倒した。  「痛たたた…」  「あら、ごめんなさい。ちいさくて見えなかった」  ニコリと綺麗に笑うのはちぃ子さん。レイ子さんと同じく長身でロングスカートがよく似合う。緩めの三つ編みが可愛くて肌艶も綺麗で、ふわりと良い香りがした。出してくれた手を握ると、引き寄せられて耳元で囁かれた。  「私よりブスなんだから大人しくしなさいね?」  「ひいっ!は、はい!」  怯えて返事をすると良い子、と頭を撫でられた。  (怖いよぉ!!帰りたいっ!)  「あー!ちぃ子早速いじめてるー!ダメだよー!?」  金髪ロングヘアをふわふわとなびかせて、仁王立ちで腰に手を当てて怒る優子は、ちぃ子よりも上司のようだった。ミニスカートから見える細く真っ白な足に釘付けになる。優子に叱られると、ちぃ子は素直に謝ってきた。  「だって、たぁ子が私より可愛いから…。ユウさん取られたくないもん」  「まぁったく!!ちぃ子は努力してるんだから自信持ちなよ!こんなことしても成長しないよ!」  「はい…たぁ子、ごめんなさい」  「いえ…」 ドンガラガッシャン!!  (もう!次は何なの〜!?)  「あ、来たかな!」  「来たわね」 「いつもいつも騒々しいわ…信じられない」  バタン!  「おっ、お待たせ、しましたぁ!」  「まぁ子…どうしたのいったい」  「新しい方が、いらっしゃると聞いたので、お茶を、と…あれ、っメガネ、メガネ!」  「まぁ、ビショビショじゃないの。優子、拭いてあげて。」  「はぁい。まぁ子、メガネ、ほら。」  「あ、ありがとうございますっ!…わぁ!かわいい子じゃないですかぁ!こんにちは!まぁ子です!」  ふわふわのボブでロングスカートのまぁ子さんは、メガネをかけると、こちらを見てキラキラした目で手を握ってくれた。  「よろしくお願いしますっ!」  「よろしくお願いします…」  (キャラが濃いなぁ〜…)  たぁ子は苦笑いしてお辞儀をした。 (私ここでやっていけるのかな??)  初日から不安なたぁ子だった。

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