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第37話

いつの間にか季節は過ぎ、僕達は何事もなく高校を卒業した。 僕と優大は大学への進学を決めたが、幸也は大学には行かないと言って、その学力の高さから、周囲を勿体無がらせた。 もうね、キツいんだ。 Ωの例のやつを気にして学校に行っても、それがある限りいつも心のどこかでビクビクしていなきゃいけない。 しかもΩと知られた瞬間から、俺は山野幸也ではなく、あのΩって言われるようになる。もう嫌なんだ。 それに…したければ勉強なら家でも出来るしさ。 そう言って笑顔を見せた幸也を僕と優大は黙ってその体を抱きしめた。 三人で話し合う中で、幸也の一番望むことはαである僕のΩの嫁として好奇の視線に晒され、噂されて一生を過ごすことではなく、自分達の事をきちんと理解してくれる人達に見守られて心静かに過ごしたいという事だった。 優大はそれでも、自分が僕と結婚することに引け目を感じるらしく、何度も何度も幸也に問いただした。 しかし、幸也の答えは一度も変わることはなかった。 「優大が、俺がこの答えでよかった。間違えではなかったって思わせてくれればいいだけだと思うんだけど?」 と何回も問われた幸也がため息混じりに優大に言うと、まるで霧が晴れたようなすっきりとした顔になって、 「俺が、お前を幸せにする!お前の人生を俺の手で極上のものにしてやる!!」 幸也の肩を掴み、必死な形相で叫ぶ優大を呆れるように見ながら、プロポーズか?!と言った幸也のツッコミに三人で大笑いした。 そうして、ついに優大のお兄さんから幸也の契約終了の言葉をもらい、僕と幸也が番となる準備が整った。しかし、幸也は優大と僕が結婚するまで待ちたいと言い出した。僕も優大もそれを了承し、僕の大学卒業を待って、同じ日に僕は優大と結婚して幸也と番うことに決めた。 春休み最初の金曜日、三人で僕の家で待ち合わせる。 その後ろには荷物の積まれている数台のトラック。 そう、僕達はこの家で新生活を始めることとなった。 卒業前、三人の家族に集まってもらい、僕達が出した結果を話した。 まず、優大のお兄さんが、二人共、私の弟になってくれるんだね?と喜んでくれ、それに同調するように皆が喜んでくれた。特に幸也のご両親は目を潤ませて幸也に良かったねと何度も何度も言い、僕と優大に深々と頭を下げた。 新生活についての話題が出た時、ネットで参加していた僕の両親が今の部屋を使ってくれて構わないと申し出てくれた。 その後、三人で色々と話し合う内に、僕達の新生活は金曜日からにしようと誰からともなく言い出し、今日の日を迎えた。 あの匂いは結局のところ答えは出ずじまいだったが、あれも結局は幸也から僕へのSOSだったのではないかと思っている。僕にしか感じ取れない匂いを出すなんてあり得ないとは思うが、そう言う不思議な事が僕と幸也の間に起きた事は事実だし、僕達の絆の深さによるものなのではないかとも思っている。 薬はまだまだ試行錯誤の段階で、なかなか結果として出るには時間がかかりそうだが、優大もこの研究に関わるべく大学は医学部を選び、俺に任せろと息巻いている。 僕は父の仕事の手助けをできるくらいの勉強をする為に大学へ行く。優大は実の所あまりいい顔はしなかった。 「俺と幸也の相手を一人でするんだから、無理するなよ。」 「だったら、優大が少し僕の体を気遣っ てくれればいいだけの話だと思うんだけど?」 「はぁ?そんなの、お前が目の前にいてできるわけがないだろう?!」 そばにいた幸也が呆れるようなことを言い放つ優大に、僕からは一週間のお触り禁止令を与えた。 まぁ、その日の内に破られてしまったけれど…。 更に時間は過ぎ、僕は大学を卒業した。 そしてついに雄大と結婚をし、幸也と番となる日を迎えた。 結婚式などと言うものはせず、三人で役所に書類を提出し、予約した少し高級なレストランで夕食をとる。 家に戻ると幸也が後でと僕に言い残して自分の部屋に戻り、それを合図に優大が僕をリビングのソファに押し倒した。ベッドじゃないのか?と聞くと、 「ようやく解禁になったんだから、いつもとは違う所でしてみたいんだよ。」 そう言って、時間をかけた優しく甘い愛撫に恥ずかしい声をたくさん出させられ、優大のが入って来る頃には、その刺激だけでイきそうになるのを二人で一緒にイきたいと言う優大に止められ、その言葉通りに優大のいいように僕はイかされた。 落ち着くと少し物足りなさそうな優大に見送られて幸也の部屋に入った。 薬は飲まずに僕を迎え入れた幸也の例の甘い匂いが部屋に充満していて、それによって理性の効かなくなった、頭から切り離された暴走する体が暴力的に幸也の体を無理矢理開かせて中に押し入った。 どうしてこんな風にさせる? と幸也に荒々しく腰を打ち付けながら尋ねた。 僕はもっと優しく甘く幸也を愛し、その首に証を付けたかったのに…。 そう言う僕に幸也は、哲雄に理性なく抱かれてその愛を感じたかった。俺を、俺だけを欲しがる哲雄に愛されたかったんだ。 そう言うと、僕の前に首を差し出した。 「噛んで…哲雄のものにしてっ!」 「僕のもの、僕の幸也!!」 歯が食い込んでいくその刺激に、幸也の体が痙攣し背中がぐっと反る。悲鳴のような声が部屋を駆け巡り、白濁の液体を出しながら幸也の体から力が抜けた。僕も幸也の体の奥深くに、その愛の証が僕らの元にやってくる事を夢見ながら、極まっていく腰を打ちつけた。落ち着いてから首に突き刺していた歯を抜いた。首にくっきりと僕のものだと分かる証がついているのを確認すると、満足するように幸也の体をだきしめて眠りに落ちた。 翌朝、扉をノックする音に目覚め返事をすると、優大が三人分のコーヒーを持って入って来た。 ベッドの端に腰掛けて僕にキスをするその横で幸也が優大からコーヒーを受け取る。 カーテンを開けた窓からは、明るく暖かい太陽の光が部屋の中に降り注いでいた。

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