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第一章・8
祐也の笑顔に、その穏やかな声に、和正は命が洗われるようだった。
もっと、この笑顔を見ていたい。声を、聴いていたい。
「清水くん、この後どう? もう一軒くらい、行けそう?」
「すみません。10時から、別のバイトがあるんです」
「残念だな」
しかし、そんなに遅くからまた働いて、大丈夫なんだろうか。
それには、祐也はお茶の入った湯呑を手でいじりながら答えた。
「プラネタリウムの仕事は午後からなので、朝はゆっくりできるんです。だから、平気です」
「そう。でも、体には気を付けてね」
「ありがとうございます」
祐也と別れた後、和正は大きく伸びをした。
なんだか、10年ほど若返った気分だ。
「ああ、楽しかった!」
口元には、自然と笑みがこぼれる。
また近いうちに『銀河』へ行こう。
そう決めて、和正は家路についた。
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