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第二章・2
汗で湿った手で、和正はドアを開けた。
「来てくれたんだね、ありがとう!」
耳慣れた、温かな声。
明るい、笑顔。
だがすぐにその表情は、こわばった。
「鳴滝……、さん?」
「清水くん、ごめん」
謝りながら、和正はソファに掛けた。
「水割り、くれるかな?」
「はい……」
床にかしずき、酒を整える祐也を見るうちに、和正の心に後悔が芽生えて来た。
こんなはずじゃ、なかった。
こんな関係を、彼との間に望んではいなかったのに。
「どうぞ」
「ありがとう。清水くんも、よかったら飲んでよ」
「いいんですか?」
「ソファに、座ってくれる?」
対面して座り、彼にも酒を勧めることで和正は、二人は変わらず対等であると言いたかった。
「乾杯」
「いただきます」
祐也の顔色は、悪かった。
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