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第十一章・8
自由に身体の動かない祐也を、和正はきれいに拭き清めながら考えていた。
(以前は、この幸せが突然失われるかも、なんて恐れたけど。今は明るい未来しか見てないなぁ)
俺もとんだ能天気になったもんだ、と自分に苦笑いした。
「何、笑ってるんですか……?」
「あ、見てた?」
いやね、と今度は照れ笑いをしながら和正は言った。
「祐也のおかげで、俺は今最高にハッピーだな、って思ってたんだよ」
「もう……。それはこっちのセリフです」
祐也は和正にもたれかかり、静かに言った。
「僕の辛かった過去、和正さんのおかげで溶けて消えそうです」
うん、と和正は祐也の髪を撫でた。
「移動プラネタリウムで、日本中、いや、世界中を回ろうな。そして、そこが全部祐也の故郷になるんだ」
「僕の、故郷に」
「そう。帰りたくなったら、いつでも帰れる場所が、たくさんできるんだ」
「はい……」
和正は、プラネタリウムプロジェクターをオンにした。
部屋中を、きらめく星々が飾る。
「赤い目玉の蠍 広げた鷲の翼……」
二人で寄り添い、星めぐりの歌を歌った。
星々は、二人の未来の道しるべとなった。
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