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第1話
「おはようございます」
「…」
はぁ…今日も挨拶は帰ってこない。
この人には挨拶して…まぁ。良くて会釈くらいは返ってくるかな。これまで声は聞いたことはない。それでよく仕事やってるよなぁ…とはいえ黙々と製品を作る仕事ではあるからそんなに話すこともないのだけれど
まぁ。他部署だしそんなに関わることもないから別にいいけどさ…社会人としての決まりっていうのあるじゃん?
俺より長く生きているはずなのに基本中の基本が出来てないとかどうなのよ。損するわ。仕事は出来る人らしいから勿体ない
俺はガキの頃から両親や祖父母果てはご近所様や全く知らない人にまでとにかく挨拶はしろって言われるような土地で育ってきたからどんなに無視されようとも挨拶はやめない。
癖のようなものになってる。
まぁそれはそうと…これから休憩時間…だというのに急ぎであげないとならない製品を次工程の部署へ運ぶため休憩時間を削っているわけだけど…少し憂鬱…何でかって?だってあの例の無表情な強面がいる部署だから…いつもは他の工程を経てそこの部署なんだけど今回のは特殊らしい。たまーにあるんだよね。そういうの
「はぁ…気が重い…」
そんな独り言を呟いて台車を押した。
その人と一緒の部署の人たちは割りと寡黙な人が多い。そんな静かな中でいつも窓口になってる人がいるんだけど…その人がいることを願いながら歩みを進めた
「おつかれさまでーす…」
最悪だ…寄りにもよってあの人しかいない…
「…」
「お疲れ様です。これ。お願いします」
コクりと無言で頷いた彼。…
やはり何も言わないのか…はぁ…重っくるしい…そのままその場を立ち去ろうと踵を返す。
「あ!!」
伝票渡すの忘れてた…うっかりうっかり…これなかったら俺ヤバイことになる…
振り返った瞬間見た光景…それは…
あの強面が…すっごーく可愛いチョコレート菓子食ってる…しかも、おちょぼ口で。それはそれはもう大切に大切に…
「あ…と…これ。すいません。伝票です。…それ…うまいっすよね」
「…あ…う…ん…」
不味いところを見られたみたいにほんのり頬を染めてはにかむその表情にパチンとなにかが俺のなかで弾けた…
「あ…ははっ。んじゃお疲れ様です!」
「お疲れ様で…す」
まだうつ向いてるし…何あれ?ギャップ?なんなの?万人が見ても可愛いはずないのに俺にはとってもかわいく見えて…いやいやいやいや…ない!!ないない!!気のせいだ!!
気のせい気のせい!!その後の勤務はただただ無心で仕事をして帰路についた
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