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第34話

「ますます綺麗になったね。お迎え遅くなってごめんね」 これは誰だ?俺は何してるの?俺は樹優じゃない…俺は… 「樹優?どうしたの?」 「ううん。何でもない」 「抱き締めて」 「うん」 彼に言われるままに俺よりも小さな体をぎゅっと抱き締める。その瞬間浮かんだのは… もう…俺を捨てないで… この感情がなんなのかわからない…けど… 足元が覚束ない。どこに向かってる?自分で声を発することができない… 「樹優?」 「…俺は…」 「くすっ…どうしちゃったの?」 「俺は…樹優…じゃ…」 否定の言葉をどうにか絞り出そうとするけれど…喉が張り付いて言葉が紡げない 「樹優。お前は樹優。俺の愛する人。俺を愛している人。そうでしょ?ねぇ。樹優」 諭すようにその人に言われる。俺の意思とは関係なく零れた言葉は… 「っ…会いたかったよ」 何で…こんな…真実とは違う言葉を発してしまうの? 目の前の人の見た目が恐ろしいというわけではない。むしろ可愛らしい容姿や華奢な体は好みのはずだ。けど…奥から襲うこの黒い固まりはなんなんだろう… 「家に着いたよ。お帰り。樹優」 「ただいま…」 「疲れたでしょ?先にお風呂使って良いよ。こっちだよ」 手を引かれ浴室に通される。甲斐甲斐しく俺の服を脱がしていく 「ふふ…樹優…」 そいつがそっと俺の胸元に唇を寄せる 「やっと…」 その幸せそうな表情にそっと手をのばして口付けてた 「…愛してる…」 「俺も…愛してるよ」 その場で相手の服も脱がし互いに肌を合わせる 「樹優…」 それだけで甘い声をあげる。 そのまま雪崩れ込むように互いを求め合う 「ずっと…待ってた…こうして…樹優に抱かれること…」 「俺がこっちでいいの?」 「うん」 あぁ…知ってる…この感覚…この人は… 「凜冬…」 …俺を通してみていたきー兄ちゃんを心の底から愛してた…あの人だ 「樹優…もっと…僕の名を呼んで」 「凜冬…凜冬…」 「あぁ…樹優…樹優…」 俺は樹優でなければならないそうじゃないと愛してもらえない… …痛いことされちゃう…真っ暗な部屋に閉じ込められちゃう…僕はきー兄ちゃん…僕は… 「っ…違う…違う!違う!樹優はそんな抱き方しない!!」 「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」 「やっぱり樹優にはまだ早かったかな?僕が抱いてあげる。僕の良いとこ君の体に教えてあげる!!」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」 そのまま乱暴に組み敷かれる。俺よりも力は弱いはずなのに抵抗ができない… 俺は…僕は…僕は… 「良い顔になってきたね。わかった?樹優」 「わか…っ…た…わかったから…」 「良い子」

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