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第51話

「こんなに側にいたのに…あのときも…先日のはーくんのときも…この数日の凜冬のときも…何も…できなかった… 俺ね、幻滅されるのが怖かったんだ…あの頃と違うって言われるのが怖かった…だから…俺が俺ってことも伝えられなかった…もし…俺が俺だって伝えていたら…何かが変わったかもしれないのに…こんなに…泣かせなくて良かったかもしれないのに…」 そう言うと俺の目元の涙を優しく拭ってくれる… 「千雪…好きだ…好きなんだ…君のこと…だから…俺に千雪を守らせてくれないだろうか?」 「天理君…俺…俺ね…好きって気持ちわからないの…だから…そんなこと言われたって俺は何も返してあげられない…天理くんは素敵な人だよ。俺じゃなくて他の誰かが…」 「いやだ…千雪の他はいらない…お前だけがいい…千雪がいい…ねぇ。千雪…覚えてる?この間俺が食べてた菓子のこと…」 「…うん…」 「あれね、千雪がくれてからずっとずっと俺のお守りみたいなものになってる。欠かしたことないんだ。 千雪に出会う前はずっとずっと…苦しんでた…けど千雪に出会えて…仲良くしてくれて…摂理だけじゃなく俺のことも一人の人間として…天理として扱ってくれたことが嬉しかった。そして千雪との出会いとあのお菓子のお陰で俺はここまで生きてこられたよ?苦しいときはあれで乗り越えてきたんだよ。千雪がいなかったら俺は…今もきっと真っ暗な牢獄に閉じ込められて…こうやって話すことだって出来なかったはずなんだ。俺に千雪が必要なんだ…沢山傷ついてきたんでしょ?いつからか傷つくことも忘れちゃったんでしょ?」 「傷付いたことないよ」 「ううん。千雪は…苦しんでる…傷付いてるんだよ」 「違う」 「違わないよ。」 「違うもん」 「本当にそこは変わらないね。頑固なとこ…でもね、いいんだよ。俺の前ではいいんだよ。頑張んなくていい…大好きだよ…笑ってるのも泣いてるのも怒ってんのも苦しんでんのも全部全部好き。千雪という人が大好きだよ。お前は千雪だ。千雪なんだよ。だから…」 「天理くんに俺は何もできない。」

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