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第53話
摂理side
数分前
「ごめん。天理。やっぱ俺は無理だわ…千雪ちゃんに意地悪するの無理…出来なかった…怖がらせて…泣かせた…ごめん…天理…行ってあげてくれる?」
「…摂理…ごめん。俺は…千雪だけは摂理にでも渡せないよ」
「わかってるよ。大丈夫だ。始めからわかってた。初めて出会ったあの頃から…千雪ちゃんにはお前しか見えていなかった…きっと…お前とどこか同じだから…安心感もあったのだろうね。俺の言葉は千雪ちゃんには届かない…」
「摂理。俺ね、摂理がいてくれて本当に…本当に感謝してる。摂理がいなきゃ…千雪には会えなかったから…生きていられなかったと思うから…」
「うん…ほら…早く…行ってあげて。今も泣いてると思う…」
天理は急ぎ足で部屋に向かい扉が目の前で閉まる…
やっと…天理が…幸せになれる…
わかってるけど…
「やっぱいてぇな…」
俺は…自分じゃ気付いていないふりをしていたけどきっと初めて会ったあの時…千雪ちゃんに恋をしていたんだ…俺の小さな小さな初恋…それが今ここで終わったのだ
あの頃どうやって喜んでもらおうかなって考えるのが大好きだった…
千雪ちゃんは何をしても可愛く笑ってくれた…けど…なんだか違和感があった。
天理は勿論俺よりずっと先に千雪ちゃんの違和感に気付いて…そして…泣かせてあげられた。
無理矢理の涙ではなく千雪ちゃんの意思で泣かせてあげた…
どんな千雪ちゃんも受け入れるのは俺には困難だろう…けど…痛みを知る天理なら…
二人とも…幸せになって欲しい…誰よりも愛する…二人だから…
俯いたとき着信が知らされた
『もしもし。摂理。俺』
「ん」
『…これから迎えにいこうか?』
「ううん。大丈夫。部屋から出て俺がいなかったらきっと天理は気にするからここにいる」
『んじゃ。俺がいく』
「大丈夫。お前には朋ちゃんがいるでしょ。各務。この数日構ってあげられてないんだから構い倒しなさい。あと、もう千雪ちゃんは大丈夫かもしんない。だから心配しないで二人で生きていくといい。」
『つーめーたーいー!!!』
「朋ちゃん?」
『もう!せっちゃんったら。そんなこと言わないでよ!!どんな形でも俺達にとって弦ちゃんは俺達の大切な人なの!せっちゃんもてんちゃんもみーんな必要なんだよ!』
「ありがと…ともちゃん」
『せっちゃん。大好きだよ』
「たった二、三日前に会ったばっかじゃん」
『出会った期間なんて関係ないの。つーくんの大切な人は俺にとっても大切』
「お人好しだね。朋ちゃん」
『何とでも言って』
あぁ…各務…良い子見つけたね…いつも自分を悪者にして来たお前にとって彼がどれだけ支えになっているのだろう…
各務…お前も幸せになれよ…
『せっちゃん。これからいくよ?』
「本当に大丈夫。また後日みんなで遊ぼ!今日はいちゃこらしてなさい…てか…ありがとね。でも今日は一人が良い…ごめんね」
『…わかった…何かあったらぜったいぜったいぜーったい連絡してよね!待ってるからね!』
「うん。ありがと。各務に連絡するよ」
『あ!そか!俺の連絡先わかんないのか。じゃ後で俺の送っておくね!』
電話を切るとどこかスッキリしてた。自室に戻ってベッドに潜り込む。
こんな姿見せらんないや…
枕に顔を埋め静かに泣いた。今日だけ…許してね…
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