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第30話
食事を終えて万里と圭太と別れ、さてどこで話そうか、と悩んでいると静から電話が来た。
実里にごめんね、と伝えて電話に出る。
「もしもし」
『大雅?学食大変な事になってたんだって?』
クククっと笑っている声がする。
「まぁ、情報提供はしていかないとね」
ハハッと笑って答える。
『正直、そこじゃ話するのは無理だろ。とりあえず、こっちも話があるから風紀の所寄ってくれ』
「オッケー。どうしようか悩んでた所だったからちょうど良かった。すぐ行くよ」
『おぅ、じゃ、後で』
「じゃ」
電話を切ってすぐ歩き出す。
「実里先輩、とりあえず風紀の所行こう」
「はい」
*****
「静?」
風紀委員室の扉をノックし、声をかける。
ガチャッと扉が開き、静が顔を出した。
「とりあえず入って」
実里と一緒に中に入ると副委員長の濱島と顧問の龍臣がいた。
「どうしたんですか?」
「ああ、タイミング良かった。お前の所の親衛隊についての話をしたいんだが…」
龍臣が腕を組んで話しかけてきた。
「何かありましたか?」
「大雅、実里先輩と2人で話す前に少しここで話聞いていってくれ」
「僕は大丈夫だけど、実里先輩も時間大丈夫?」
「私はどちらにしても自主謹慎中ですし、学園側にもそう伝えてあるので大丈夫です」
「え?実里先輩もうそこまで話通してしまったの?」
「大雅、その事も含めて話があるんだ」
「分かった」
とりあえず、と席を勧められてソファに座る。
飲み物は?と聞かれて遠慮する。
「まず、昨日の件については電話で話した通り、ただの痴話喧嘩という事で処理をして双方に厳重注意をしておいた。次、公衆の面前で問題行動を起こした場合は罰則を処するという事になっている」
静が落ち着いた声で話し始める。
「うん。分かった、手を煩わせて申し訳なかった」
「…申し訳ございませんでした」
大雅と実里、双方が頭を下げる。
「で、それに伴って実里先輩の自主謹慎なのですが、先程の問題を厳重注意ですませたのに対して、自主的にとは言え謹慎するに値しない出来事であった、とする。が、実里先輩的に納得いかないと思うので、今日、明日の2日間のみ自主謹慎とする」
「っそれは!!」
「それ以外に自主謹慎と称して休んだ場合は無断欠席とし、それに対して厳しい罰則に処する」
「っっ!!」
「実里先輩、諦めた方がいいよ」
「…寛大な処置、ありがとうございます」
実里は申し訳なさそうに再度頭を下げた。
「でだ、お前の所の親衛隊の解散の件なんだが、あの人数が一時的にでもフリーになるのは風紀上も問題があって、実際に少しちょっかいをかけられた…というのが数件既に上がっているんだ」
「…そう」
「そういう面倒な奴らが一定数いるのも現状なんだよな、昔からこの学園の悪い風習だよ」
と龍臣も口を挟んできた。
「まぁ、確かに。自分の名前だけでもいいのなら親衛隊はそのままでも構わないですが、それでも皆が納得してくれれば…ですけど」
暗に親衛隊との交流会はもうしない、と言う状態でもいいのなら…と実里を見る。
「…元より、大雅様の会長解任の噂が流れ始めてから親衛隊内で色々と話し合って参りました。今まで、大雅様の庇護下に置いていただく事で救って頂いていた者も多いのです。…今後は大雅様に守って頂くだけではなく自分達もまた大雅様をお守りしたい、と話しておりました」
実里は真剣な表情で話を進める。
「大雅様の親衛隊には大雅様のお名前をお借りして大きな顔をするような子は一人もおりません。純粋に大雅様のお役に立ちたい、お側にいたい、という子ばかりです。ただ、それが恋慕に繋がってしまい少し…無茶をする子がいる事も事実です」
「確かに、天城の所の奴らは素直に天城を慕ってる感じだよな。大半が役に立ちたい派って感じで少数派で恋愛対象って感じか」
濱島が話に入ってくる。
「ええ、なので今回の会長解任から親衛隊は解散、となるお話しだったのですが、一度解散後、再度結成させて頂きにお話させてもらおうと思っておりました」
「え?そうなの?」
「はい。その時は親衛隊長は副隊長の新家に任せて、私は一親衛隊としてまた大雅様のお役にたてれば…と思っております」
「それって、皆の総意って事?」
「はい」
「そっか」
実里を見ると真剣な表情。静や、龍臣、濱島も頷いている。
「まぁ、サインはするけど本当に何もしない形になるよ?それでもいいの?」
「はい、ほんの少しでもお役に立ちたいと、皆思っておりますので」
ふぅと溜息を付いて、
「仕方ないね。生徒会が何と言うかはわからないよ?」
と言うと龍臣が
「あぁ、それに関してはオレも容認すると生徒会には伝えておく。静、親衛隊発足の書類を出しに行く時は一緒に行ってやれ」
「了解しました」
「じゃ、この話はここまでだな。ちょっと嫌な話も少し出てるからきをつけろよ。静、それも話しとけー」
龍臣はヒラヒラ手を振りながら部屋を出て行った。
「じゃあ、おしまいでいいかな?実里先輩も僕に何か言いたいことは?」
「大丈夫です。お話できて、気持ちが伝えられて良かったです」
「そっか、じゃあ解散でいいかな?濱島先輩、実里先輩を頼んでいいですか?」
「任せろ。実里、行くぞ」
「はい。ありがとう。では」
ペコリと頭を下げて部屋を出て行った。
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