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第29話
実里先輩に学食へのお誘いメールを打って、万里と圭太と一緒に学食へ行く。
一応、静にも学食に行く事を伝えておいた。
Fクラスから歩いて学食へ向かっていると一般クラスの生徒達が遠巻きに何かヒソヒソと話している。
まぁ、大雅の事が今一番のニュースだから仕方ないだろう。
先程、広報誌から号外が出たらしい。
朝の一件だ。
圭太がすでに手に持っている。早いな。
「痴情のもつれか!?元生徒会長、Fクラスのカリスマに愛の告白!!……ってすごい内容…」
「さすが広報、相変わらず仕事が早い」
「気になるのそこですか!?」
「ゴシップも娯楽の一つだからね。隔離されてるような空間だから面白そうな事は食いついていいと思うよ。ただ、プライバシーはあるからそこは気を付けて欲しいところだよね。」
「さすが大雅君、器がでかい」
「オレが一番気になったのは、万里がFクラスのカリスマって呼ばれてる事だよ」
確かにカリスマっぽいからあながち嘘ではないと思う。静も影響力のある男だって言っていたし。
「フフッ良くも悪くも目立ちますからね。見た目も派手だし。たまにモデルの仕事もしてるんでそう言われてるんですよ。カリスマモデルバンリって所から」
「ケータァ。お前はホント人の事をぺらぺらと。まぁ、よく口が回る事でー!」
圭太の頬っぺたをグリグリと摘んで万里が吠えた。
「へぇっ!!万里モデルもやってるんだ!カッコいいし似合う!!写真とか見せてよ!!」
思ってた以上に自分のテンションが上がって声が大きくなってしまった。
周りもザワザワとコチラを見ている。
「あ、ごめん。興奮して声が大きくなっちゃった」
「あー、いーよ別に。タイガでもそんな風になるんだなーってまた新たな一面見たわー」
「どういう事?」
「うーん。基本的に穏やかであんまり感情の起伏を見せないようにしてるっぽかったからサー」
…万里って結構人の事見てるよね。
学食に着くともうすでに結構人が溢れている。
学食の利用法は簡単で、学食アプリの入ったスマホを使うシステムになっている。
注文画面で好きなメニューを選んでバーコードを読ませて席に着く。
できたらスマホに番号が表示されて取りに行くシステムだ。
S寮の食堂はスマホを使うのは同じだが、自分で取りには行かない。ホールを任されている人が給仕してくれる。
昼に学食を使う事がほとんどなかったので、少しとまどったが、圭太がフォローしてくれた。
席を探していると、もうすでに実里が来ていてしっかりと席を確保していた。
「大雅様!コチラに席を取っておきました」
「実里先輩、早かったですね。席もありがとう」
「いえっ!」
実里が顔を赤くして俯いた。
席に座るとすぐにスマホが鳴る。
「あ、大雅様、私取りに行きますね」
「実里先輩はもう頼んだの?」
「私は、大丈夫です。気になさらないで下さい」
「ダメだよ。食べなきゃ。元気も出ないよ。軽い物でもいいから頼みなさい」
「…はい」
偉そうに言って、自分も昼を抜こうとしたくせに、もう万里に影響されている自分に笑えた。
自分で注文したご飯を取りに行く、万里と圭太も一緒に取りに来た。なんだか新鮮な気分だ。
ものすごい注目の的で、視線をシャットアウトするのが難しいなと思っていると
「こんな中で食事するのも久しぶりだなー。笑える」
万里は平気そうに笑っている。
「オレは笑えない…緊張して手が震えそう〜」
圭太も平気そうだ。
「実里先輩、誘っておいてごめんね。ココでは話できないかも」
こんなに見られていたら落ち着いて話もできない。
「大丈夫です」
実里ははにかんで、学食横のコンビニ行ってきますとそちらへ向かった。
「うーん、メシ食わすためにと誘ったけど、ムボーだったかなー?」
「あぁ、大丈夫だよ。食べた後少し時間取って話するし」
「そー?ならいいけどね」
「万里チャン!いつものご飯大盛りね!こっち置いとくから!」
と食堂のオバチャンが万里に声をかけた。
「アリガトーオバチャン、いつもサンキュ助かってるよー」
万里も軽口を叩いて笑顔で返事をしていた。
万里のお盆には丼飯。
ご飯大盛りの更に上を行く量でメニューにはない物だ。万里の為の丼らしい。オマケで小鉢が一つ多くついている。
「万里、すごいね。食堂の皆さんとも仲がいいんだ」
「オバチャンに量少ねぇーって文句言ったら、これでもかってくらい米ついできて、ペロッと食ってやったらこうなった」
「万里、オバチャンキラーですからね。いつも何かオマケしてもらってて、羨ましい限りですよ」
すると、
「ケータちゃんも丼飯ついでやろうかー??」
と言われて圭太は顔を青くして頭をブンブン振って断っていた。
こんなに楽しい昼の時間は初めてだった。
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