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第7話
新木の運転で向かったのは、すぐ近くにあったパンケーキ屋だった。
昼時ということもあり、店の中は人でいっぱいだった。女性とカップルだらけ。
「新木さん、ちょっと浮いてるね……」
男二人客が珍しいのか、店内に座っている他の客からチラチラと見られる。
「そうだね……ちょっと時間ずらせば良かったね」
コンタクトを外して、眼鏡姿の新木。
欠点になりそうな眼鏡もよく似合っていて、これも注目されてる原因か、と納得する。
「ごめんね、静かな方がよかった?」
申し訳なさそうな表情を浮かべる新木に笑顔を向ける。
「ううん、全然平気。俺甘いの好きだから楽しみ」
あからさまにほっとした様子の新木に、メニューを手渡す。
メニューの1ページ目には大きく、生クリームたくさんのパンケーキ!当店名物です!と書かれている。
「夏希くんはね、記憶無くなる前ここにずっと来たいって言ってたんだよ」
メニューを広げた新木はそう話し出した。
1ページ1ページ、思い出を思い返すかのようにゆっくり見ている。
「あんな事になって、死ぬ程後悔したんだ。また今度、また今度、って後回しにしてたから」
メニューをぱたんと閉じた新木は夏希に笑顔を向けた。
「だからよかった、君を連れてこれて」
その笑顔は、俺じゃない、誰かに向いている感じがする。手が掛かって、お酒が好きで、ヤンチャな夏希に対しての笑顔と、言葉。
「そっか……、俺は何が食べたいって言ってたの?」
何か変な文面だな、なんて思いながら口に出した。すると新木は嬉しそうに、イチゴがたくさん乗ったパフェを指さした。
「じゃあそれと飲み物頼んでいい?」
新木はいいよ、これでいいの?と聞いてくる。その言葉にうん、と頷いた。
本当は生クリームがたくさん乗ったパンケーキがいいなんて言えないな。だって新木さんの好きな夏希は、イチゴパフェが良いって言ってたんだから。
楽しみな気持ちがずーんと沈んだような気がした。
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