7 / 7

第7話

 新木の運転で向かったのは、すぐ近くにあったパンケーキ屋だった。  昼時ということもあり、店の中は人でいっぱいだった。女性とカップルだらけ。 「新木さん、ちょっと浮いてるね……」  男二人客が珍しいのか、店内に座っている他の客からチラチラと見られる。 「そうだね……ちょっと時間ずらせば良かったね」  コンタクトを外して、眼鏡姿の新木。  欠点になりそうな眼鏡もよく似合っていて、これも注目されてる原因か、と納得する。 「ごめんね、静かな方がよかった?」  申し訳なさそうな表情を浮かべる新木に笑顔を向ける。 「ううん、全然平気。俺甘いの好きだから楽しみ」  あからさまにほっとした様子の新木に、メニューを手渡す。  メニューの1ページ目には大きく、生クリームたくさんのパンケーキ!当店名物です!と書かれている。 「夏希くんはね、記憶無くなる前ここにずっと来たいって言ってたんだよ」  メニューを広げた新木はそう話し出した。  1ページ1ページ、思い出を思い返すかのようにゆっくり見ている。 「あんな事になって、死ぬ程後悔したんだ。また今度、また今度、って後回しにしてたから」  メニューをぱたんと閉じた新木は夏希に笑顔を向けた。 「だからよかった、君を連れてこれて」  その笑顔は、俺じゃない、誰かに向いている感じがする。手が掛かって、お酒が好きで、ヤンチャな夏希に対しての笑顔と、言葉。 「そっか……、俺は何が食べたいって言ってたの?」  何か変な文面だな、なんて思いながら口に出した。すると新木は嬉しそうに、イチゴがたくさん乗ったパフェを指さした。 「じゃあそれと飲み物頼んでいい?」  新木はいいよ、これでいいの?と聞いてくる。その言葉にうん、と頷いた。  本当は生クリームがたくさん乗ったパンケーキがいいなんて言えないな。だって新木さんの好きな夏希は、イチゴパフェが良いって言ってたんだから。  楽しみな気持ちがずーんと沈んだような気がした。

ともだちにシェアしよう!