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第6話

 新木と生活を共にして1週間が過ぎた。  朝早く出る新木を見送った後、自分の仕事である家事をある程度済ませて、リビングにある大きなソファーに腰掛けていた。  今は五月も後半に入ったところで、窓を開けると気持ちのいい風が部屋を包む。 「暇だなぁ」  共に住む新木がひとつだけ条件を出した。これ以外は何をしてもいいけど、これだけは守って、とひとつだけ。 「ひとりで外に出ないこと……か」  出たところで道に迷いそうだし、と思い、わかったと告げたが、家でじっとテレビを見てるのも飽きてきた。部屋は広いが、掃除を任されたリビングと水回り、自分の部屋も綺麗に片付けた。洗濯はボタンを押せば乾燥までしてくれる。  要するに、することがないのだ。 「新木さん、今日は何時までかなぁ」  テレビの音しかしていない部屋に、嫌に大きく響く自分の声。  外に出れなくても、新木さんがいてくれれば話して、笑って、知らない間に時間が過ぎるのに。  ポケットに入れていた携帯を取り出すが、通知も来ていなければ、その携帯が震えることもない。  過去の自分には友達もいなかったのか?なんて思ってしまう。  携帯をつけても、代わり映えのない夕焼きの写真。  はあ、とため息をついた。 「夏希くん、起きて」  身体をゆさゆさと揺さぶられ、目を開けると正面に綺麗な顔がドアップ。  わ、と小さく声を上げると、新木は身体を離した。 「掃除してくれたんだね、ありがとう」  時計を見ると、新木が出て行って、掃除が終わって4時間弱。あのままぼーっとしていて寝落ちたみたいだ。  ラフなジーパンに白いロンTの新木は、出て行ったままの格好だった。 「掃除したって言っても、元から綺麗だけどね」  掃除したかもわからないくらいなのに、新木はこの1週間、帰ってきたらありがとう、と言ってくる。掃除してくれてありがとう、お風呂綺麗にしてくれてありがとう、夕飯用意してくれてありがとう、と。  こっちからすれば、こんな家で衣食住を提供して貰ってて、これくらいしか出来なくてごめん、という気持ちが大きいのだが、ふわりと笑ってありがとう、という新木の顔が好きだった。 「でも、本当に何もしなくてもいいよ?まだ記憶が戻って2ヶ月弱しか経ってないんだから」  頭をポンポンと叩いて、新木はリビングを出て行った。時間を見て、昼時だなーと台所へと向かう。  月に4回家事代行を呼んでいる新木の家は、その日に冷蔵庫に数日分の食材が入れられているらしい。使いやすい豚肉だったり、白菜だったり、卵が綺麗に冷蔵庫に入れられている。 「新木さーん、お昼ご飯たべるー?」  広い家なので、大きな声でそう叫ぶと、パタパタとスリッパで走る音が聞こえてくる。 「あ、待って待って、夏希くん!今日は外で食べよう」  とりあえず、と卵を手に取っていたのを新木が取り上げて冷蔵庫へと戻す。 「一緒に行きたかったお店があるんだ」  冷蔵庫を閉めた新木は夏希の肩を押して、廊下へと連れて行く。 「ほら、お洒落してきて」  そう言って肩を押す新木に、お洒落って……と笑ってしまう。 「わかったよ、デートだもんね」  デートの言葉に新木が反応する。 「いや、そ、そういう意味じゃないんだけど!その、えっと」  吃る新木にかわいいな、なんて思う。  デートって言う言葉で照れるなんて。  

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