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ショートケーキ
「疲れた.......」
机の上に一応出していた参考書やペンケースを片付けながら小さく呟いてみる。
もう7月も下旬、大学4年の学生最後の夏休みがすぐそこまで迫っている。
「颯、今週末提出のレポート終わった?」
友人の間宮瞬がスマホを見ながら聞いてくる。余裕そうである。
「お前今.......今週末って言った.......?」
「うん、国際経済学のレポート。今週末までだぞ。」
何度自分の記憶を辿ってもそのようなレポートを書いた記憶が無い。またやってしまった。
「1文字も書いてない.......」
「またかよ(笑)」
勉強自体は得意でも苦手でもない。
だが作文や論文、レポートとなると昔からいい思い出がない。
自分の考えを文章にすることが幼い頃から人一倍苦手だ。
「颯このあとバイトー?」
「テスト前はバイト入れてない、今日は.......」
「あー、(笑)わかった、いってら」
当たり前のようにバレてる.......今更照れるようなことでもないが何を隠してもコイツには全てお見通しなので適当に手で挨拶をしてから別れた。
いつものように大学から2駅先の家へ向かう。まあ自分の家ではないけど.......。
インターホンを押し少し経つと扉の向こうから白くて細い手首が見えた。
「祐〜!来ちゃった♡」
「帰れ。」
間髪入れずに扉は閉じられた。これもいつものことだ。
インターホンを連打するともう一度扉が開く。
「祐の好きな駅前のショートケーキ買ってきたよ」
「.......」
祐は嫌がりながらもなんだかんだいつも入れてくれる。昔から優しい。
四畳半の和室に必要最低限の物だけ置いてある部屋。
不便だと言う人もいるだろうが、そこに祐は快適そうに暮らしている。
そんなこの場所が俺も心地いい。
「で、今日はなんだ」
今まで読んでいたのであろう本を手に取りながら祐は聞いてくる。これもいつもの流れだ。
「今週末締切の.......レポートが.......書けません!!!!!」
土下座をして畳に何度も頭をぶつけるが祐は多分見てない。
「お前な.......俺だって一応学生なんだぞ.......それくらい自分で.......」
「わかってます!!!!!なので高級ショートケーキを買ってきました!!!!!」
ショートケーキを素早く差し出すと今まで手元の小説から目線を変えなかった祐の瞳が少し揺れる。
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