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ばか

「大人になってもこの頃と同じことしてるわ俺.......」 懐かしい本をパラパラと捲りながら昔のことを思い出す。 「やっと気づいたか、手伝ってやるからさっさとレポート課題見せろ」 「いつもありがとう祐くん.......」 「こういう時だけくん付けですか」 「祐だって昔は"はや"って呼んでくれてたじゃん。また呼んでくれてもいいよ。」 「はいはい、いいからやるぞ。」 はぐらかされた.......大人になるに連れてお互い素直になれなくなった。 なにか思ったことがあっても、はぐらかしたり、察してくれるだろうと口には出さない。 仲はいいけど、奇妙なバランスで関係を保ってるな、と自分でも思う。 途中カップラーメンを食べたりゲームタイムを挟みながらレポートを進め、いつの間にか時計の針は22時を指していた。 「ひとまず休憩するか。」 祐はそう言って麦茶を一口飲んだ。 扇風機しかない祐の部屋は暑がりの俺には正直しんどい。 でも祐はいつも涼しい顔して過ごしてるよな.....。 扇風機に当たる祐の黒い髪が柔らかく靡いている。 よく見てみると、こめかみの辺りから一粒の水滴が垂れていた。 「(祐も汗かくのか.......)」 人間なんだから当たり前か、とかなんとか考えていたら無意識に見つめてしまっていた。 「.......なんだよ」 「!?.......あっいや別に」 少しの沈黙が起きて部屋には扇風機の風の音だけが響く。 「なあ祐」 「ん」 「.......祐って彼女とかつくんねーの」 「別に.......お前こそ....どうなんだよ」 「俺は付き合っても長く続かないんだよねえ〜.......」 「だろうな」 肘で軽く祐を小突く。 「俺の自由さを受け止めてくれるのは祐くらいだもんなぁ.......いっそ結婚しちゃう?」 その場のノリでふざけて言ってみた。いや、魔が差したと言った方が正しいかもしれない。 「....バカじゃねーの」 ああ....... パンパンに膨れ上がって、想いが今にも弾け飛びそうになる。 俺はバカだから未だにわからないよ。 こんなふざけたノリを昔から嫌うのも、 背を向けた祐の柔らかい髪から、少しだけ覗くピンク色に染まるその耳の真意も。

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