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第16話

「ん……」  お昼時。『ブランカ』の裏側にて。  少年の熱い吐息が漏れる。  恋人たちが人目を忍んで、唇を重ねているところだった。レオンハルトがどうしてもとねだってきたので、「舌を入れないで3回までなら」とユティスが条件を出した。  あっという間に3回目のキスまで終えてしまい、それでも唇を寄せてこようとする騎士を、少年はあっさりとかわす。 「これ以上は、ダメだよ」  と、ユティスはレオンハルトの体を押し返す。  すると、騎士は明らかに物足りないといった表情をする。それに気付いているのかいないのか、少年はあっさりと背を向ける。 「俺、店に戻るね」  その腕を未練たらしく、レオンハルトがつかむ。  すがるように言った。 「今日の夜、お前の家に行ってもいいか?」 「んー……どうしようかな」  ユティスは考えるそぶりをしながら、視線を散らす。  すると、レオンハルトはぴくりと震えた。 「おい……前にヤッてから何日経ったと思ってる。1日目は『用事がある』で2日目は『調子が悪い』で3日目は『生理だから』だと!? お前、生理なんかこねーだろ!」 「でもなー、こないだはもうやめてって言ってるのに、やめてもらえなかったしなー」 「今日こそはいい加減、ヤらせろよ」 「そういう言い方しちゃうんだ?」 「いや……させてくれ」 「ふーん……」 「…………下さい」  とうとうレオンハルトが項垂れてしまうと、ユティスはにこりと笑った。 「まあ、考えておいてあげるよ」  唇に人差し指を当てて、目を細める。  その笑顔は小悪魔を思わせるものだった。

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