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初耳1

「でかいな」 古い伝統のある学校と聞いて、古めかしい校舎をイメージしていたのに、着いてみれば改築されたばかりで輝いていた。 蔦で覆われた鉄格子で作られた大きな扉の正門から中に入ると庭木の手入れの行き届いた庭園が広がってその先に校舎が聳え立っていた。校舎までは赤煉瓦の敷かれた車も通れるほどの通路が続いている。 ジーパンにTシャツ、その上にオレンジ色のパーカーを着て斜めがけバックを下げている俺は場違いな雰囲気にため息を吐きながら、校舎の入口に向かった。 全寮制の有名男子校。 大会社の社長や政治家を数多く輩出していて、その子息や芸能人が入学していると噂には聞いている。 俺とは無縁だったはずの学校に、今日、編入する。 親父の期間不明の海外派遣が決まり、極普通の高校に通っていた俺は叔父が教師として勤めているこの学校に編入することになった。 1人暮らしでもいいと言ったが、両親は断固として反対し、叔父の後押しもあってここに編入することになったのだ。 一般階級の俺がこんなところに入って大丈夫だろうかと、心配にはなったが、編入試験でも面接でも、別段変わったことも無く、指摘されることも無かったので、俺は平静に編入することにした。 両親は今朝、そろって海外に出発した。俺はその見送りをした足でそのままここへやってきた。 夏休みもすでに終わり、明日から10月という中途半端な時期に。

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