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初耳2

安易に了承してしまったことを、今さら後悔しても遅いので、ため息を一つこぼして諦めた。 「どこ行きゃいいんだよ」 長い歩道をプラプラと憂鬱な気分で進み、開いていた校舎の入口から中に入るとずらりと並ぶ下駄箱の間を通って、並べられていた来客用のスリッパを取り出した。 「編入生か?」 頭の上から声がかかり俺はスリッパを履くために下げていた頭を慌てて上げた。 そこに立っていたのは俺より背の高い制服を着た生徒だった。 こんなイケメン初めて見た。 真っ黒な艶のある黒髪と二重のきりっとした双眼は髪と同じ漆黒で、白い肌がそれを引き立てている。 そして、その声。 「は、はい。比嘉響(ひがきょう)です」 俺は一瞬で虜になった。 低すぎず心地いい声音。ボソリと話す声は聞き取りにくかったがハスキーで魅力的だ。 つい、見とれてしまった。だけど、相手もじっと俺を見ていた。 「来い」 それだけ言うと生徒は歩き出した。俺は慌ててスリッパを履いてその後を追った。 「あ、あの。何年生ですか?」 その背中に話しかけるが、返事はしない。 もう一度その声を聞きたいのに。

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