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奪われる想い
「点呼?」
「休日の夜は寮生がいなくなることも多いから各部屋を回って確認するんだよ」
先週もあったらしいけど、ここからスタートだからあえて俺は所在を確認されなかった。
数口食べると桃香先輩はスプーンを置いて皿を持って立ち上がった。
「え? 残すの?」
桃香先輩は座ったままの俺を見下ろす。
「残すなら食いますよ」
桃香先輩の持っている皿を取る。
「それが甘やかしてるってことだよ。桃香、しっかり食えよ」
受け取ろうとしていた皿を相良先輩が桃香先輩に突き返して、ソファーに座らせる。眉間に皺を寄せていかにも嫌そうに続きを食べだした。
「プリン2個食べたからお腹いっぱいとか?」
春が言うと桃香先輩は頷いた。
残ったカレーを嫌々食べて、俺を置いて3人は点呼に出かけてしまった。
あの2人が来なければ桃香先輩はまだ喋っていたかもしれない。相槌を打ってくれた程度だけど、プリンの甘い匂いが雰囲気までも甘くしていたのかもしれない。
どういう変化があったのかは分からないけど、喋った。喋ったというか、相槌だったけど。
あのプリンを食べるところは可愛かった。
でも、梓先輩に会ってからだから、きっと何か言われたんだ。
俺と喋らないって梓先輩は知っているから。
そっか、きっと梓先輩に言われたから俺と喋ったんだ。
悔しさが込み上げて唇を噛み締めた。
桃香先輩と梓先輩。従兄弟同士といっても仲良すぎだ。
見ていて勘違いしない方がおかしいほどの引っ付き具合だ。
普通、抱き締めたりしない。
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