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奪われる想い

プリンを食べながら視線だけこっちに向けて頷いた。 …………。 何これ可愛い。 さっき苦しかった胸がすっと甘くしびれる。 桃香先輩はもう1個を手に取った。と、同時に『ピンポーン』と来客を知らせるチャイムが鳴った。 「誰かな」 桃香先輩はプリンを手に取ったままじっと俺を見ている。これは、俺に出ろというサインなのだろう。 『パリッ』というフィルムを剥がす音を聞きながらドアを開けると、「ああーーっ、ずるいっ」と春がすでに2個目を食べ始めている桃香先輩を指差した。 「餌付けされてんのかよ」 相良先輩も後ろから入ってきた。その手にはラップのかけられたカレー。遅い桃香先輩のために食堂でもらってきてくれたのだろう。 「取らねぇよっ」 振り返るとプリンを手に取ったまま桃香先輩は自室に行こうとしている。 2人は部屋に入ってきてリビングの机の上にカレーを置くと、「せっかく夕飯持ってきてやったのに」とプリンを食べ終わった桃香先輩を見た。 「2個も食べたの? ずるい」 春はどこかずれたことを言っている。 「比嘉、桃香を甘やかすなよ?」  相良先輩は苦笑いで、俺に釘を射す。 「俺は別に甘やかしてなんてないですよ。ご飯食べられなかったみたいだから、プリン持ってたんで……俺、甘いもの苦手だし」 「桃香、お前も甘いものばっかり食ってんなよ。梓に言うぞ」 桃香先輩は顔を顰めるとプリンのカップを片付けてスプーンを持ってくるとカレーを食べ始めた。 「さっさと食えよ。今日は点呼だぞ」

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