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『エピローグ』

俺は……早まったかもしれないと、休み明けの全校集会後思い知った。  「僕はね、喋らない方がいいと思ってたんだよね」  全寮の寮長会メンバーが集まっての会議に俺は春と一緒にやってきた。  だけど、桃香先輩は現われない。  会議室で僕の隣に座った梓先輩は桃香先輩待ちで始まらない会議に嫌気がさして、勝手に席を移動してきたのだ。  「響ちゃん、今日は午前中お休みだったんでしょ」  「……。全校集会のことは聞きましたけど……」  全校集会で桃香先輩は喋ったのだ。  あのハスキーな声で。  おはようと挨拶をすると、ざわついていた講堂は一切の物音が消えた。  壇上にいる人物に一斉に視線は集まり、「B寮、寮長会は2年比嘉響を副寮長に任命した。これは俺個人の指名だ。意義がある場合は俺のところに来るように」  言い終わって壇上から降りると一斉に講堂は騒がしくなった。  「個人の指名ってどういうことですか?」  大声で叫んだ生徒に、桃香先輩は、「響は俺のものだ。手、出すな」と壇下に置かれたマイクで喋ったのだ。  その場にいなくてよかったと心から喜んだ。  「一臣……いつ来るんだろうね?」  今日はその全校集会のせいで学校中が大騒ぎになっていて、ざわついている。  桃香先輩……俺、喋れって言ったけど……その、もういいよ。  俺は会議室のテーブルに両肘をついて顔を埋めた。  「響がね、喋るように言ったんだ」  そう、返事をして、「恋人だよ」と……丁寧に返事を返しているのだ。  桃香先輩の教室にはその声を聞くためと、質問をするための生徒が列を成している。        喋ることは意思の疎通。      語ることは思いを広めるため。      僕はその『声』に気がついた。      僕はその『声』に心惹かれた。            「俺に聞かせてって……ことだったんだけどな」          喋り始めた恋人は、昨日の晩以来言葉を交わしていない。      「響ちゃん。僕のところに来る?」      隣で梓先輩が笑いながら俺の頭を撫でた。             

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