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『声を聞かせて』

「………重いし」  そう言うと俺の顔を覗き込むようにして横に寝転んだ。  「響、副寮長やってよ」  「無理。俺、何にも知らないし、来たばっかだし……」  「じゃあ、ここに梓呼んでもいいんだ」  意地悪く笑う。  グッと押し黙った俺に額同士をくっつけた。  「梓先輩、帰ってこないって言ってましたよ。それに、次の試験はまだ先だし……」  つらつらと言い訳を続けても、桃香先輩は笑ってそれを聞いているだけで、額に口付けをしてきた。  「ま、まだ、話してる……」  返事はせずに眉間に皺を寄せる。  「俺は寮長会だってよく分かんないし。会議があってもきっと迷って行け無いし。成績だって普通だし。梓先輩みたいに桃香先輩が言いたいこととかも分からないし。相良先輩みたいに差配は出来ない………」  額に落とした口付けが眉間を通って、鼻に口づけて、唇に…………。  そこへ来て、俺が喋るのをやめると、ふふっと笑った。  指先が俺の唇に触れる。  「ここに、いて」  その指先が離れて、自分の唇を押えた。  ゾクゾクとするその声と、色気を含んだ仕草。  「俺が、副寮長になったら……んっ……喋ってくれる?」  唇に触れた指が俺の後ろ頭を引き寄せて唇が触れ合った。  「声を……ふっ……聞かせて」     

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