この世には、『第二の性』と呼ばれるものが存在する。 　特徴がないのが特徴ともいえる、大多数の人間の性であるベータ、繁殖に優れており、男女問わず子供が産める稀少な存在のオメガ、そして──そのオメガと番という関係を築き、全体的に優れた能力を持つ、他を統治すべき性のアルファ。 　鷺ノ宮(さぎのみや)塁(るい)の第二の性は、アルファだ。両親も、弟も、一家全てがアルファという所謂"純血"の家系に生まれた。鷺ノ宮家は、オメガどころか、圧倒的多数なはずのベータすらおらず、大豪邸の玄関近くの壁に貼られた家系図には、アルファの文字がずらりと並んでいる。 　いくらアルファ同士と言えども、ベータやオメガが産まれる可能性は十二分にもある。いや、むしろアルファのみが生まれ続けるのは天文学的数字に等しい。その極めて特殊な血と個人個人の能力の高さから、『鷺ノ宮』と言う名前は国内に広く知れ渡っていた。