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 用を足して宴席へ戻れば、塁の席にいた女性たちは新しく来た周の席の周りに集まっていた。先程まで自分に向かっていた色んな感情を含んだ視線が、今は周に注がれている。  女性たちの輪の中心で人当たりの良さそうな笑みを浮かべる周が、戻ってきた塁に気付いて手招きをする。その表情には、塁にしか分からないほどの僅かな焦りが含まれており、塁は苦笑しながらその誘いに乗って、今しがた置かれていた荷物が退けられた周の横の席へと腰を下ろした。 「ほら、お前の分」 「サンキュー」  すっ、と塁の目の前に滑らされたジョッキには、先程飲み干したビールがなみなみと注がれている。周が塁の分まで注文してくれていたらしい。  ジョッキの取っ手に指をかければ、隣から「ん」という短い音と共に、同じくたっぷりとビールの入ったジョッキが差し出される。持ち上げたジョッキをそれに緩く打ち付けながら、塁は周と声を揃えて「乾杯」と口にした。  周が来れば、塁に群がっていた女性陣も少なくなり、やっと食べ物にありつける状態になった。近くの大皿に置かれていた唐揚げを頬張りながら、喉を潤すためにビールを流し込む。  先程から、何だかやけに眠い。酒のせいかとも思ったが、まだビールも二杯目の半分ほどしか呑んでいないし、そもそも塁はビールで酔ったことなど一度もない。  横から聞こえていた咀嚼音が遅くなっていくのに気づいたのか、周が女性たちとの会話を止めて項垂れる塁の顔を覗き込む。 「塁? どうした?」 「……ねむ、い……」  近くにあるはずの周の顔がぼやけている。開くことが億劫になった目を閉じれば、急速に周りの音が遠退いて、意識が闇に飲み込まれていった。

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