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第2話

● 「で、何でそれなのかな……」  風呂から出てきたら差し出されたもの。それは浴衣だった。 別に今からどこかに行こうとかと言う提案ではない。要は浴衣を着たシチュエーションでHがしたいと言うことなのだろう。 差し出しても受け取らないと見ると押し付けてきたので仕方なく手に取る。 「紐の結び方とか分かるか?」 「分からないけど、したって数秒で意味なくなるんじゃね?」 「いいんだよ。浴衣ってのはちゃんと着ないと意味ないだろうが」  言いながらまた浴衣を取り上げると着せにかかった。袖を通して前を重ねると女よりは細い帯でウエストと腰の中間くらいをクルクルと二回転ほど帯を回されて後ろで平べったく締められた。要領を得ている。 「上手いな」 「このくらい出来なくてどうする。俺は商店街の祭に駆り出されたり、大家さん開催のお茶会に呼ばれたりするから着慣れてるんだ」 「ふーん。でも俺、その姿見たことない」 「またな」 「ぇ、今日は俺だけ?」 「俺が着てどうする。今からお前を脱がせるってのにっ」 「う、うーん…………」  そうはっきり言われてしまうと、ちょっと気恥ずかしくなる。隼人は着せてもらった浴衣を嬉しそうに眺めていたのだが、そんな時間は長く持たなかった。 「来いっ」 「ぇ……ぁ、うん…………」  手を引かれてベッドまで導かれるとパフンッとそこに放り投げられる。その勢いで裾がめくれ上がって太ももが露わになった。 「お前……まさかこういうのもバイトでやってるんじゃないだろうな」 「な……んでそんなこと言うんだっ」 「色っぽいから」 「……冗談言うな…………」 「浴衣のせいかな」 「そうに決まってるっ。俺、こういうことするの、お前とだけだからなっ!」 「うん」 「お……お前は、どうなんだよっ! 女子含む、だぞっ?!」 「決まってる。お前と一緒だ」 「ふ、ふーんっ!」  強がってみるが、本人の口からそう聞くとやっぱり安心するし嬉しい。相手に見えないようにそっとそっぽを向いて口をほころばせていると、誠がベッドに乗って這い上がってきた。足首から膝裏。そこから太ももに向かって指が這ってくる。 「着物のいいところって知ってるか?」 「なっ……なに?」 「女のスカートみたいに手がスッと差し込めるところだよ。お前の脚、ちっとも毛が生えてないから綺麗だよな」 「んっ……」  チュッと口づけされながら撫で回されるといい気分になってくる。隼人は誠にされるがままになろうと体の力を抜いたのだった。 股の間に入られて下着の上から股間を揉みしだかれると先走りの汁が下着を濡らす。後ろだけツルンッと脱がされると指を突っ込まれて解された。 「あっ……は……は…………は……ぁ……んっ…………」  帯は簡単に解けはしないが、浴衣は簡単に左右に広がる。隼人は仰向けなまま後ろへの刺激をされて腰を突き上げていた。そこを下着の上から口に含まれて我慢出来なくてヒクヒクと身を震わせて射精してしまった。 「ぁぁぁっ……んっ!」  ジュルジュルと卑猥な音を立てながら下着ごと精液を吸われる。イヤイヤをするように身をくねらせてみるのだが、そう簡単には離れてくれなくて下着を脱がされると大きく股を開く格好を取らされた。 「浴衣の下は淫乱な体、ってのはいいよな?」 「なに言ってんだっ。は……やくしろよっ」  濡れ濡れの下半身をヒクつかせて自ら開いている体をくねらせる。誠から見たら淫猥そのものかもしれないが、隼人からしてみたら中途半端で放っておかれるもどかしさしかなかった。 「駄目だな」 「なにが……駄目なんだよっ」 「だってお前だけ満足しただろ?」 「え?」 「射精した」 「ぁ、ごめん……」 「入れる前にしゃぶって」 「いいけど……このまま?」 「……そうだな。そのままのほうが俺好み」  言われて下半身まっぱになるのを魅せつけられて、オマケに顔の上に跨がれてしゃぶるはめになる。 「んっ……ん…………んっ…………」 「いい調子」 「ふっ……ぅ……ぅん…………ん……」  必死になって相手のモノをしゃぶり続ける。時折深く突っ込まれて嗚咽が漏れた。 「ぐっ……ぅ…………ぅ……ぅぅっ…………」  半分涙目になりながらも突っ込まれたモノの熱さを感じて下半身が揺れた。相手のモノが大きく硬くなって、そろそろと言う時になったら不意にモノを引き抜かれてヨダレが糸を引く。 「ぁ…………」 「もういいっ。入れる」 「…………うん…………」  半分酔っているような感覚の時、そんなことを言われると正直返事が曖昧になる。それに自分がどんな顔をしているのかも分からないから恥ずかしい。幸い照明はちょっと暗めだからマジマジと顔を見られることもないからいいのだが…………。相手の声は明るく、楽しんでいるようだった。声が弾んでいるのが分かる。彼は隼人の開いた股の間に座り込むと隼人の秘所に勃起して濡れたモノをあてがい間髪入れずに突き進めた。 「ちょっ……ばかっ! あっ……くっ…………ぅぅっ…………」  合図くらいしろよっ! とか思いながらも突き進んでくる彼のモノを必死になって力を抜いて受け入れようと努力する。 グイグイと勢い良く最後の最後まで押し入れてくる。もう入らないと言うところまできて、おとなしくなった誠が乱れた浴衣の隼人の乳首に手を伸ばしながらキスをしてきた。 「んっ……ん…………」 「お前の中、相変わらず熱いな。それに感度もいい」 「……るっさいっ」  毒づいてみるが、それも我慢しながらだ。中に入ってきている誠のモノがドクドクと脈打っているのが嫌でも分かる。顔を近づけ頬に肩にと、ついばむようなキスをしながら同時に乳首をこねくり回してくる。これでは感じまいとしても感じずにはいられなかった。 「ぁっ……! んっ…………ん……んっ……」  感じて体を動かすと、いかにもこちらから誘って腰を動かしているようで本意ではなかったが、そうせずにはいられないほどヒクついてしまう。 「乳首……。こうして弄くられるの、好きだろ?」 「んっ……んんっ……ん…………」 「ちゃんと答えろよ」 「好きっ……だよっ」  それがどうしたっ……。 「モノ突っ込まれながら乳首攻められると、どうしようもなくなるだろ?」 「……ああ…………。すげー好きっ……だよっ…………っ……」  くそっ……。  こう言わされるといつもなんだか負けた感がある。だからタダでは転びたくないなどと思ってしまうのだが、それは相手が本格的に腰を動かすことで吹っ飛んでしまうのだった。 「そろそろ俺も動くから。自分のモノは自分でしっかりしごけよ」  言い終わる前に動きだしながらそんなことを言う。  言われなくたって……! と思うのだが、やっぱり主導権を握ったほうが強いに決まってる。隼人は着慣れない浴衣を乱しながらシーツの上で踊った。 「あっ……! ぁっ……! ぁぁっ…………!」  突き上げられるたびにブレる視界に彼の姿を見つける。隼人は片手で自分のモノをシゴきながら、もう片手で必死になって彼にしがみついたのだった。 ● 「じゃ、俺行くわ」 「ん? ……ああ」  また来いよとばかりに片手だけあげて返事をよこす。 洋服を着た隼人は靴を履くとベッドから立ち上がった。体は軽いようで重いような……。なんかヘンテコな感覚がしていた。それもこれもけして爽やかな汗のかきかたじゃないからだろうと思う。これから家に帰っても何が待っているわけでもないのだが、家に帰るとそれでリセット、そこからスタート、みたいな気分になるから帰りたいのだ。スタスタと玄関まで来ると一応忘れ物がないかの確認をする。 「……ないっ。あー、洗濯したからな」  自分の家の鍵とか財布とかスマホとか、一切を持っていないのに気づく。これでここから出たら鍵を持ってないからもう一度入るのに苦労する。 「っぶねぇ…………」  つぶやきながら洗面所に戻ると自分の持ち物をポケットに入れながら身を翻す。と、そこに誠が立っていてドキッとしてしまった。 「んだよ、脅かすなよ」  グイッと誠を押しのけて玄関まで歩く。 「なぁ」 「んだよ」 「今度いつ来る?」 「决めてないから分かんないっ」 「…………」 「あれ、あれれれ。もしかして寂しいとか?」  あざ笑うように口の端をあげて振り返ると、相手が本当にちょっと寂しそうな顔をしていて驚いてしまった。 「ちょっ……何お前…………」  寝ぼけてるんだなと思うが珍しい。玄関まで無言でくっついてきた誠に隼人はキュッと抱きついて軽いキスすると身を離した。 「……じゃあなっ」 「……ああ……」  パタンッと静かにドアが締まる。隼人はエレベーターに向かいながらも振り返りつぶやいた。 「どうしたんだよ、あいつ…………」  もしかしてあれじゃ足りなかった……とか…………?  まさかね……と言う表情でフンッと鼻を鳴らすとエレベーターのボタンを押した隼人だった。 終わり 20170526 タイトル「狂おしいほどに好き、ってわけじゃないけれど」

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