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小さなすれ違い⑩/待つ
美典が寝てから俺は蓮二さんに電話をする。でもずっと呼び出しはするけど蓮二さんは出てくれなかった。
「なんで出ねえんだよ……って、あ? 電源切りやがった」
呼び出し三度目くらいで唐突に通信が途絶え、電源を切られたことがわかった。今までこんな風に無視されたことなんかない。それにここ最近のお互いのすれ違いを考えたら、なんとなくヤバい事になってるというのは俺でも感じた。
蓮二さん、怒ってる? いや、美典のせいだよな? 蓮二さんが出ていった理由が「美典」のせいだとしか思えない。だからなんで俺からの着信を無視するのかがその時は本気でわからなかった。
んん、やっぱり着信を無視するのは俺に対して怒っているから……?
美典が来ることを言わなかったから? それだけの理由? 俺たちのすれ違いの原因は元はと言えば蓮二さんが悪い。それでも些細な事で俺が苛ついて、ちょっと関わりを避けていたところがあるからやっぱり罪悪感が湧いてくるのは事実。
いや待てよ? そうじゃなければ万が一、ってこともあり得なくもない? 俺のことを無視してるならいい。蓮二さんの身に何かあったってことじゃないよな? 子どもじゃないんだし……でも携帯の電源を切ったのが蓮二さんじゃなかったら? 電源を切ったんじゃなく、電波の届かないところに連れ込まれていたとしたら? 俺は事の原因が「俺」ではない可能性を考えていたらどんどん嫌なイメージが湧いてしまい不安になった。
結果的には美典ではなく俺が原因だったわけなんだけど、この時の俺は心配の方が膨れ上がり自分が原因だなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったから、もういてもたってもいられなくなってしまった。
「え? 蓮二さんどこ行っちゃったの? は? 電話繋がらねえ……蓮二さん? 電話出ろよ!」
「智さっきからうるさい!」
部屋の中から美典に怒鳴られる。俺は慌てて、ベッドに潜り込んでる美典の元へ行き今考えていた最悪のシナリオを縋る思いで聞かせた。
「は? アタシみたいな可憐な女の子じゃあるまいし。馬鹿じゃん? 心配しすぎ! 蓮二さんは智よりしっかりしてるんでしょ? そんなん朝になれば普通に帰ってくるから! もうほんと、いい加減寝るから静かにしてくんない?」
クッションを投げつけられ、俺は我に返る。
確かに──
人のベッドですやすや眠る美典の姿を見て、そうだよ、こんなのに出迎えられた蓮二さんがニコニコ愛想よくするわけないじゃん、って思い直した。ムッとして出ていったに決まってるし。
心配して損した……とまでは思わないけど、とりあえず俺は遅番だし、ギリギリまで待ってれば帰ってきた蓮二さんと話ができるかな、そう思って俺は玄関で蓮二さんの帰りを待つ事にした。
この時は俺はだいぶ冷静さを取り戻していたし、少し心配な部分もあったけど、今までのことも含めてちゃんと話をしないとな、と思っていた。
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