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第7話

 芳村さんは消沈した顔で身体を起こした。下はパンツ姿のまま、行儀よく正座をする。おれもつられて、正座をして向かい合った。 「怒らないで聞いて欲しいんやけど」 「また結婚とか言い出したら」  拳を握る。芳村さんはさっと腕で自分の頭を防御した。様子を窺いながら、続ける。 「実は……探偵事務所の経営が大変に苦しく」 「はあ。それは見てれば分かりますけど」 「このままでは今月の給料が支払えへんので」 「……はあ」 「きっと肇クンは小生なんて捨てて他のところに行ってしまう!と思ったので」  うなだれて悄然として。 「だったら結婚したらええんやないかと」 「……は!? そこ意味わかりませんけど!? なんで結婚に飛躍するんですか!」 「あああーやっぱりそうやんねえ、なんかおかしいと自分でも思ってたんや~! でも小生、肇クンのこと好きやし思いついたときは一石二鳥!とかって喜んでたんやけどやっぱりおかしかったんや~!」  本当になんでこんな人好きなんだろう、おれ。  ──でも、まあ。  おれは深々と厳かに頷いた。 「事情は良く分かりました。つきましては結婚式の日取りはどうします?」 「……え?」  芳村さんがぽかんとする。おれは片眉をあげて澄まし顔になった。  この数日間、振り回された仕返しだ。──おれが芳村さんを好きなことはまだ言わない。 「あとそれから、セックスの続きしてもいいですか。何とかの生殺しは勘弁してくださいよ」

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