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第1話
「歩希《ほまれ》、誕生日おめでとー!」
歩希と呼ばれた青年は、生物学科で遺伝子を学ぶ真面目な学生だ。
8月18日――晴れて二十歳の誕生日を迎えた。
ゼミを同じくする女生徒から誕生日の情報がもれたのだろう。ゼミのたまり場に顔を出すと騒がしく迎えられた。
夏休みが始まる前に、図書館へ本を借りにいくがてらやってきたのだが、とんだサプライズだ。
「あ……ありがとうございます。びっくりした」
掻き上げられた前髪は清潔感があり、眼鏡の視界をクリアにしている。
その眼鏡からは歩希の驚いた瞳が覗いていた。
「歩希も二十歳じゃん」
「お、じゃあ酒解禁か!」
よくつるんでいる先輩と、同学年だが浪人をしたため年上の友人が口々に言うと、にんまりと顔を合わせる。
そうして次の瞬間、示し合わせたかのように――
「いいとこ連れてってやるよ!」
揃ったその一言で、歩希は繁華街へと連れ出されたのであった。
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