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第2話
雑居ビルの屋上を覆うように、テントが建てられている。
その下には四人掛けのテーブルと椅子がずらりと並ぶ。結構な客入りらしく、場はざわざわと騒がしい。
「お前、ビアガーデン初めてだろ」
「というかそもそもビールが初めてだよな」
「はあ……」
意見を求める間もなく、あれよあれよと連れられたため、さほど乗り気ではない。
「ほら見ろよ、すげーだろ」
座席につき、先輩が容赦なく指差すのはビアガールとよばれる女性だ。
肌にぴったりと吸い付くような、ビールのラベルをプリントしたワンピースを恥ずかしげもなく着こなして、笑顔でビールジョッキを運んでいる。
ボディラインがはっきりしているだけでなく、胸元は零れそうなほどに開き、太ももが露わな裾丈だ。
ここに来ている男どもは、ただビールを飲むだけでなく、ビアガール目当てでやってきているのだろう。
皆、鼻の下を伸ばしてガーデンフロアを歩くビアガールたちを眺め、時には自分の隣に座らせようとしている。
「歩希、大丈夫か?」
「あ、ああ……すごいんだな。――?」
フロアをいくスタッフを見ていると、当然ほとんどがビアガールだが、その中にはやたらと肩が角ばって脚のたくましいビアガールが紛れている。
そしてラベル柄のワンピースの裾元から覗くデルタゾーンに、自分の体と同じような膨らみが見えることさえあった。
「……え?」
「ん? なに驚いてるんだよ。いまどきジェンダーフリーなビアガーデンくらい珍しくないだろ」
「って、お前初めてだもんな」先輩がからからと笑う。
どうやらこのビアガーデンでは、女性も男性も垣根なく、各々好きなように働いているらしい。
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