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第10話
ズキリと痛みが走り、懐かしい記憶から目をそらす。絶えず襲いかかる発情の波と痛みに、アダムは目を覚ました。
ぶれる視界に窓が映る。カーテンから覗く外はまだ明るい。どうして自分の部屋で寝ているのかと、鈍い頭で考える。
「っ、……そう、だ。……おれ」
宰相に助けられたのだと思い出す頃には、眠気で誤魔化せていた感覚までもが明確になってきた。段々とクリアになる苦しさと痛みに、アダムは唸り声をあげた。
ふーっ、ふーっ、と噛み締めた唇から苦しげな息が漏れる。
全身が熱い。頭の奥まで溶かすように、苦しくて堪らない。
誰かを呼ぼうと身じろいだ瞬間。
触れてもいないのに、性器から白濁液が迸る。
「んっ、んぅーーーッ」
絶頂感に身をふるわせて、きゅうっと足のつま先を丸めた。下着は何度も吐き出した精液と、後孔から溢れてくる陰液のせいで、ぐっしょりと濡れている。
絶頂が過ぎるのを息を詰めて耐えようとも、次から次へと淡い快楽の波は止まらない。けれど、徐々にその感覚も長くなっていった。こうなると、直接刺激を与えない限り、いつまでも燻る熱から解放されないことを知っている。
あの時はシオウが助けてくれた。
けれど今は、誰もいない。隣にシオウはいない。
「ふ、っふ、ぁ……や、だ……っぁ、ぁあ」
グズグズと泣きながら、アダムは重たい腕で自らの下肢へと手を伸ばした。くったりと力を失った性器に触れる。
くち……っ、くちゅ、くちゅっ、と淫靡な音が部屋に響いた。
こんなことしたくないのに。でも、しなかったら頭がおかしくなりそうだ。
「はあ……っ、はあっ、ん……きもち、ぃ、や、だ」
なのに気持ちよくて仕方ない。擦り上げると、えも言えぬ幸福感と快楽に惚けてしまう。このままずっと、発情してばかりの淫らな化け物になったらどうしよう。
そんな恐怖心と堕落させる快感がぶつかり合う。
宰相に頼んだ薬草が届くまで、なんとか自分だけで乗り越えなければならない。
アダムは意識が落ちる前に、薬の材料である南国の薬草を買いに行ってもらうように頼んだ。異国の薬草だから数が少ないうえに値も張るが、抑制剤は使えないのだからしのごの言っている場合じゃない。
早く、早く、早く。
この熱から開放されたい。
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