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胴慾 1
珀英を怒らせた。
それはわかってて。珀英が怒るなんて滅多(めった)にないし。怒るなんて思ってなくって。
さすがに甘えすぎたんだろう。
原因はわかってる。昨夜連絡なしに先輩と飲みに行って、そのまま酔い潰(つぶ)れて先輩の家に泊まって、起きたら二日酔いで具合悪いから珀英に迎えにきてもらった。
しかもスマホの電池切れてて、先輩の家でちょっと充電させてもらって、珀英に連絡した。
電話した時の珀英の動揺と慌てっぷりと、事情を知らされた時の呆(あき)れ声が、その落胆ぶりが凄(すご)かった。
きっと一晩中寝ないでオレの心配をしていたであろう顔色と、呆れ返って何も言えないし言いたくもない表情(かお)と、そういうのを隠すこともできないくらい疲れきってる珀英を見て、申し訳ないなと素直に思った。
家に強制送還されて、シャワー浴びて、水飲まされて寝かされた。
起きたら謝らなきゃ。ちゃんと謝らなきゃ。
そんな事を考えながら、珀英の匂いがする自分のベットで寝ていたら、不意に重苦しさを感じて目が覚めた。
目を開けると、カーテンの隙間をぬって射し込む光と、すぐ目の前に珀英の二重の漆黒の瞳と、鼻筋の通った高い鼻が飛び込んできた。
一瞬、息を飲む。
心臓がドキドキしている。いきなり惚れた相手が目の前にいるのは、心臓によくない。
「な・・・何だよ?」
「あー・・・起きちゃいました?まあいいや」
「珀英?」
珀英はオレの上に覆(おお)いかぶさるようにのしかかって、オレの体の自由を奪うと、顎(あご)を捕らえていきなりキスをしてきた。
舌を差し込まれて、搦(から)めて、強く吸い上げられて。何度も何度もしつこく吸われて、舌が痺れてくる。
珀英の大きな手が胸のあたりを撫(な)ぜて、腰に下りて、オレが弱い骨盤のあたりや下腹部のあたりを、執拗(しつよう)に撫ぜる。
「んんっっ・・・ふぅっっ・・!!」
堪えきれない声が、口唇の隙間をぬって、外に漏れる。
体の熱が上がっていく。
珀英の指は、オレの体の良いところを全部知ってるし、珀英の掌(てのひら)はオレの体が良くなる触れ方を全部知っている。
腰や背中や、胸や太腿をゆっくりと執拗(しつよう)に撫ぜられて、身体の全部が熱を持って気持ち良くなって、おかしくなっていく。
「はくえぃ・・・やぁっ!」
ずれた口唇の隙間(すきま)から、嬌声(きょうせい)が溢れる。
昼間っから発情している珀英を、更に煽(あお)るってわかっていても、気持ちいいのが抑(おさ)えられない。
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