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ゆるふわ泥酔注意!(1)

困った……。 あ、こんにちは。飯野佑太です。 先日はとまりがお世話になりました。 とまりには生まれてこの方甘えっぱなしだから、つい……。 お恥ずかしいところを見せちゃったって思ってる。 反省してる。いや、まじな話。 ◇ ◇ ◇ 今日はとまりと一緒に、中学の卒業生会に来てるんだ。 「おい佑太!グラス空いてんじゃねぇか!!」 「え、あ、すみません!ありがとうございます」 地元の中学校に通っていた卒業生たちが、年齢問わず集まって飲もうという会だ。 部活の先輩やら、担任教師が共通の後輩やらがいるので、話題には事欠かない。 俺は一応バスケ部だったので、部の先輩たちと飲んでる。 「だからよ、あん時県大優勝の決め手になったのは、俺のスリーポイントシュートなんだってば!」 「はいはい。でも佑太もいい動きしてたぜ」 「え!そうですか!ありがとうございます!一応、俺なりにフルパワーを出せたとは思ってます」 「まあ、佑太も頑張ってたけどよ。でも俺もいい線行ってましたよね!」 「そうな。関東大会でずっこけなきゃな」 「あれは……言わんといてください……」 先輩がその更に先輩に痛いところを突かれて頭を抱えてる。 「佑太!次こっち来いよ!」 ちょっと離れた所に座ってる先輩たちから声がかかる。 「はい!……最後は残念でしたけど、関東大会の時の先輩の動きはキレッキレでしたよ。俺、あの後しばらく先輩の動きマネしようと思って色々試行錯誤してたんです」 「佑太ぁ……お前いい奴だなこの野郎!!」 「いたたた、痛いです先輩」 先輩に頭を抱えられてぐりぐりされた。気のいい先輩だ。 「佑太、早くこっち来い!」 「っ、はいっ!」 今度は野球部。掛け持ちしてたんだ。 「佑太、お前すごかったよ。親善試合とはいえあの強豪校に勝てたのはお前のおかげだと思ってるぜ」 「いえ、あの時のは、俺は先輩のナイスアシストのおかげだと思ってますから!」 実はあと、サッカー部と陸上部とテニス部と軽音部とバドミントン部と卓球部を掛け持ちしてた。 いろいろやってみたくって、なんでも首を突っ込んでたら、やたらと顔が広くなってしまった。 さっきから部活の先輩後輩に呼び止められては酒を注がれてる。 それはいいんだけど……。気になってることが、一つ。 「まりちゃん、本読んだよぉ!めっちゃ笑った!」 「ありがとー!何のやつ?」 「えっとねー、深夜に独り会社でカップラ作ってたら秘密組織のスパイに狙われるやつ!買って帰りの電車で読んでたんだけど、スパイがラーメン完食するくだりで吹いたんだからね!」 「あ!あれはねぇ、すっごく評判がいいんだよぉ。未だに増刷くるもん」 「まりちゃん何これ―。髪長いのにさらっさらじゃん!肌も毛穴一つないし!ずるいー!角栓って言葉知らないでしょ」 「えへ。髪はねーFOURをライン使いしてトリートメントでのんびりパックするといいよ!僕も今日のために気合入れてお手入れしてきたんだぁ!うるさらでしょ!」 とまりが女の子の集団に囲まれてる。 「FOURかぁ。やっぱ高価(たか)いだけあるねー。私もご褒美で買ってみようかなー」 「お肌は?基礎化粧品何使ってんの?」 「BLUEROSE!あれ僕おすすめだよ!ぷるんぷるんになれるの!お金出す価値あるよ!」 「やっぱあれかー。気にはなってるんだよね。口コミいいし。今度お試ししてみようかなぁ」 囲まれてるだけならいいけど、えらい勢いでカクテル飲んでる。 ゴッドファーザーなんて度数高いの飲んで、大丈夫かなとまり。 あ、ダメだ。耳赤くなってる。これは泥酔コースだな……。 無駄だと思うけど一応声かけておこ。 「とまりー。飲み過ぎんなよ」 「あ、佑太くーん!こっち来てよぉ。ねえねえ今大学生なんでしょ?一人暮らししないの?」 「え、俺ですか?うーん、一人暮らしはしないかなー。結構ずぼらなんで」 とか言って、ほんとはとまりのお隣さんっていうアドバンテージを手放したくないだけだったりする。 だってとまり、可愛いんだぜ? 例えばほら、お酒飲んで唇に溢れたやつをちっちゃな舌でぺろって舐めるとことか。 やっば。えっろ。エロ可愛いの極致。とまりの口許から視線を外せねー!

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