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 共通項は【クラスメイト】。 「ん、ん、んっ」 「はぁ……っ変態、締め付けてんじゃねぇよ、」 「ンンッ」  きっかけは、……何であっただろうか。 「るか、るかっ」 「ん、可愛いですよ、里津(りつ)」 「あぁっ、ぅ、るかもかっこいぃ」 「ふふ。さぁ、我慢しないで、っほら」  季節は夏。茹だるような暑さの中にぐったりする間もなく、今日も四人は交わり続ける。 「あっ、(こう)っ……ん」 「っ。テメェ、顎舐めんな」 「やら……ん、いっぱい舐めたらいっぱい中に出してくれるでしょ?」 「……くそがっ」  目の前のベッドにすがり付きながら毛布を手繰り寄せ、強烈な快感に身をよがらせる(みなと)は思う。  ――どうして向こうはあんなにも恋人らしい甘々な雰囲気を醸し出しているというのに、自分達はそうでもないのだろう? と。 * * * 「――え?恋人らしい?」 「うん」 「おや、これは驚きですね。湊くんは鴻と恋人になりたいんですか?」 「そうじゃなくて!」  悩みを持ちかけた側の湊が即答で否定したのが不思議だったようで。クラスメイト二人は互いに顔を見合わせ、再度湊の顔を見つめては首を傾げる。 「では、どういう意味ですか?」  黒縁眼鏡を指の背で押し上げる聡明そうな男、 朔瀬(さくらい)流夏(るか)。同級生とは思えない大人びた容貌の流夏は、現在学級委員を務める非常に成績優秀な、教師も認める優等生だ。 「――みっちゃん?」  その隣で今にも泣き出しそうに眉をハの字にしているのは、 宗田(そうだ)里津(りつ)。女子が認める可愛い男子として、学内では結構な有名人である。  そんな彼らに囲まれ、ぽつりと溢した言葉が大きな火種になりそうな気配を察した高宮湊(たかみやみなと)は慌てて手を振った。 「いやっ、勘違いしないでほしいんだけど」  と、釘を刺し、小声で続ける。 「なんか、ほら? 鴻って俺にだけ厳しいって言うか、態度が悪いって言うか……」 「厳しい?」 「悪い、ですか」 「そう。りっちゃん達はすごくラブラブ感があって……なんか羨ましいなぁって」  共通項はクラスメイト。ただそれだけ。 「じゃあ、次する時は交代する?」 「あ、いいですね。マンネリ化は避けたいですし」 「流夏くん、上手だし丁寧だから、みっちゃんも気に入ると思う」 「では、そうしましょうか。ね? 湊」 「え? あ……うん、そうだね」  きっかけは、きっと【あの時】。 「じゃあね、こうは? 鴻くんに直接言えばいいよ。もっとラブラブ感出してって」 「えっ。……いや、それは……なんか違うような?」 「えー」 「そもそも私達、別にラブラブってわけじゃないですよね」 「それひどいよー流夏くん!」 「要は、相手の思い遣り方、の違いではないですか?」 「あぁ、そうかもっ。鴻くん、みっちゃんだけにエスだもんね」 「ね」 「…………」  そして、夏々城鴻(ななしろこう)。  彼を交えた四人はその時から、ある契約じみた繋がりを持っている。 【せっくすふれんど】  有効期限は高校を卒業するまで。卒業をしたら関係を断ち切り、一切互いに干渉しないこと。これらの約束は絶対である、中途での変更は認められない。  生真面目な流夏によって契約書なるものが作成され、四人の署名と捺印されているそれがしっかりと保管されていることだろう。  契約から三ヶ月。すっかり流布することのできない関係は板につき、日常と化しつつある。毎日、一日と空けることなく、誰かしらと会い、話し、それだけが目的ではないだろうと体を繋げ合う。全ては快楽の為、悦楽の為──……。……? 【あの時】から、その淫らな関係が始まったのだった。

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