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第1話

「独歩のやつ、またやってるな……」  オレは同居人ならぬ同棲相手のきったない部屋を掃除していた。  そのときにまたみつけた、ラブボのレシート。  オレの恋人の観音坂独歩は医療関係会社の営業のサラリーマン。  そして彼はとても不器用で、あまり会社に貢献出来ていないらしく、枕営業のためラブボを使っているらしい。 「オレが部屋の独歩の掃除すんだから、気を抜くなっつーの」  彼はとても不器用で、営業出来るような性格じゃない。  繊細と言えば聞こえが良いけど、気にし過ぎっつーか?  精神的に病むくらいの会社なんて辞めて、オレに養われちゃえばいいのに、独歩にそれを言うと『スマン、お前と対等でいたいから。……仕事は辞められない』と真面目に答えられて、オレは強く出ることが出来ない。  せめて人事移動を願い出ない?と言いたいけど、独歩がヤル気なんだし、止める事も出来ない。  それで最近独歩は枕営業をして仕事を取ってきているらしい。  クマはがあり、窶れてはいるけど、オレの恋人はそれなりに顔が整っているし、抱き心地はサイコーにイイ。  そう、独歩は男だけど『抱かれる側』だ。  営業相手も男。  それにオレも独歩を抱いている。 「せめてオレに気を使って、レシートは捨ててくんないかな……」  オレはそのレシートをスエットのポケットに仕舞い、掃除を続けた。

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