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第1話

 「大丈夫。優しくしてやる」  男は思いやり溢れるっぽく言う。  そして確かに、優しく身体を弄られた。  着ているシャツの下に差し込まれた男の手は熱くて。  優しく撫でられる感触に驚いた。  熱い手に素肌を撫でられる感触は俺の知らないもので。  思わずビクンとなった。  でも、違うから。  違うから!!  「離せ!!」  俺は男を突き放そうとした、  なのに。  なのに。  全く身動きさえ出来ない。  コイツの膝やら身体が押さえ込む場所が絶妙すぎるのだ。  コイツ、どうしたら人間を押さえ込めるかを知ってる・・・。  俺は焦る。  「優しくするし、気持ち良くする。酷いことなんか、絶対にしない」  男の顔が俺の顔の上にある。  ヤバいくらい光る目。   獣みたいだ。  そしてその顔の半分は、赤い文様が刻まれている。  文字のような。   蔦のような。  獣の目と、赤い文様。  それが圧倒的すぎる。  視覚が脳に教える。  危険。  危険。  危険。  声が出ない。  危険で危ない生き物を前にして、身体のスイッチが入ったのだ。  「楽に殺されようとする」スイッチが。  補食される生き物の能力が。  そんなスイッチがあることも知らなかった。    「怖がるな。オレはお前にだけは優しい・・・」  男は囁く。  優しいヤツは強姦などしないと叫びたかったが、声も出ない。  ガチガチ震えるオレの頬を、赤い文様が入った男の左手が撫でる。  俺を組み伏せる前に、さっさと脱いだ男の身体の左半分には赤い文様がぎっしりと刻まれている。  顔にまで。  それは・・・性器にまで、半分だけ刻まれているのをもう見てしまっているし、それがどんだけデカくて、何よりガンガンに勃ってるのも見てしまっている。  右半身には何もない。  デザインにしても異様だ、とか考えている場合ではないのだ。    男のデカいのは明らかな意図をもって今、俺の股間にズボンの上から股間にこすりつけられているのだから。    やだ、こんなの。  突っ込まれたら裂ける。  殺される。  「口を開け」  言われたけれど、開けるはずかない。  でも、男が顎のところを押したら、簡単に口が開いてしまって・・・。  男の唇が俺の唇を塞いだ。   ヌルリと入ってくる熱いもの。  口の中をかき回された。  混乱する。  濡れて熱いそれ。  舌をこすられる。  熱くて濡れてて、怖い。  震える。  喰われている。   食い尽くされている。  喉を撫でられ、刺激され、溢れる唾液を飲まされていた。  上顎を舐められ、何故か呻き声が出た。  熱い。  わからない。  熱い。  「たまんねぇな。キスなんかで・・・。口の中だけでも気持ちいいぜ。可愛いすぎるだろ・・・」  男が唇をはずして夢見心地に囁いた。  俺はぼんやり唇を開いたまま、それを聞く。      気持ちいい?  わからない。  わからないけど。  俺はまた男に塞がれる唇を拒めなかった。  熱くて、濡れてて・・・  もっと欲しかったから。  男がこすりつけてくる股間のデカい熱いモノのしげきに呻いた。  わからない。  わからない。  どうしてこうなった  何で身体半分に刺青入った全裸の男に組み敷かれているのか。  何でキスされているのか。  何で俺はこんなハメに?      

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