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第30話

 男の指は大きい。  だが男の舌で散々蕩けさせられたそこは、男の指を難なく受け入れた。  でも、異物感しかない。  舌で舐め回された時ほどのことは・・・。  男は笑った。  嬉しそうに。  「お前の中・・・熱い。指まで溶けそうだ」  囁かれた。    熱いのはお前の指だ。  指のタトゥーが俺の中を焼くみたいだ。  俺はそう言いたかったけど、喘いだだけだった。  確かめるみたいに指は動き。  そこを捕らえた。  「ああっ!!」  思わず声がでてしまった。  慌ててふさぐ。  なんかキタ。   何、あれ。    「ここだな・・・ほら、イかせてやるよ」  男は優しい顔で言った。  また擦られた。  出てくる悲鳴を男の唇に塞がれた。  そこをこすられて感じる感覚は、神経を鷲掴みにされてるかのように鮮烈ぎて、怖くて、身体が何度も痙攣した。  痛いのか。  怖いのか。  わからない。  ただ、脳が焼けた。  何度も真っ白になった。  こんな感覚知らない。  痙攣する身体を抱きしめられ、口を塞がれ舌を擦られた。    何度も何度も中から責められ、とうとう俺は。  射精したのだ。  前に触られることもなく。  後ろに指を突っ込まれたままで。  男の背中に爪を立てた。  男の口の中に叫びを注いだ。  弾けるそれを男の腹にこすりつけ続けた。    前だけの射精と違って、その絶頂は怖い位長かった。    「怖・・怖い・・・ああっ」  男にすがりついて子供みたいに泣いてしまった。  「可愛い・・・可愛いな、くそっ、ぶちこみてぇ」  男は呻きながら、それでも俺の背中を、なで続けてくれた。    指だけでこんなんになるなら。  チンポ挿れられたら、俺、どうなっちゃうの?  俺は怖くて。  でも、その怖さの原因であるはずの男にすがりつくことで安心した。  いや、そんなの挿れられる予定ないから!!  慌てて打ち消す。  「大丈夫・・・大丈夫だ。怖がるな・・・」   男は宥めるように何度もキスしてくれた。  そう。  俺は男のその言葉を信用したのだ。  根拠など全くないのに。  男は俺を抱きしめたまま、自分で自分のを扱いて・・・俺の顔を見ながら出した。  ちょっと情けなさそうに。  でも、男は笑ったのだ。   嬉しそうに。  「お前とならこんなんでもいいって思ってしまうんだからな」  男は布団に俺を運びながら言った。    身体を綺麗に流され、髪を乾かされ、部屋着を着せられた後に。     布団は2つ並べられていた。  いつの間にか。  部屋着はお揃いのハーフパンツにTシャツだ。  男が買ってきたやつだ。  意外とお揃いとか好きなこういうところがコイツにはある。    俺はまた胸がざわめく。  「こんなん」男は俺以外と色々してきたのだ。  女にも、男にも。  むかついた。  俺は男に背を向けようとしたら、男が慌てて俺を引き寄せる。     前に他の男達で、俺を抱くための練習をした話のせいで、布団から追い出されたのはわかってるらしい。  「セックスなんて、穴にぶち込んで気持ち良ければ良かった。単なる穴としか思ってこなかった。でも・・・違う。お前は違う・・・・・お前が気持ち良くなければ意味ねぇんだ。こんなこと思ったことないんだ」  必死で囁かれる。  布団から追い出されないように。  「お前が本当に嫌なら、お前の体温を感じて、寝るだけでいいんだ・・・隣りで誰かを寝かせたことはねぇ、殺しに来たヤツかも知れないからな。一緒に誰かと寝たのはお前が初めてだ」  男は俺の髪を撫でてくる。  伝えたいのがわかる。  とにかく俺が好きなのがわかる。   必死なのがわかる。  それに。  「俺が初めて?」  俺は聞く。  「誰かと眠ったのはお前だけだ。・・・寝ないでヤリ続けたことならあるけど、気絶させたこともあるけど、隣りで寝かせたり、寝たことはしたことはない」  男は断言した。    なんか気に入らない感じもあったけど、なんかもういいや、と思った。  男の胸に顔をうずめた。  背中に腕が回され、大切なモノのようにだきしめられる!  俺だけがコイツが色々「初めて」なわけじゃ無いなら。  俺にもコイツの「初めて」があるなら。  それが「嫉妬」だと思い当たって焦る。  嫉妬・・・  嫉妬だと?  俺は考えないようにした。  明日はバイトを休みにしておいて良かった。  コイツと抱き合って寝てよう。  ダラダラと。  ヤらしいこともしてもいいもしれない。  気持ちいいし。  男の心臓の音に安心した。  「お休み」  俺は男に言った。  男は戸惑った顔をして、そして、やっと思い至ったしい。  「お休み」  男も言った。  本当に誰とも寝て来なかったのだ。  お休みの挨拶さえ知らない。  どこか怖いところから来た男の腕は暖かで。  俺は安心していた。  これ以上危険な男はいないだろうに。  逃げるべきなんだろう。  こんな怖い男。  人と眠ることさえ危険だった男。  でも。  でも。    俺は。  どうしてもこの男から逃げられない。  逃がしてもらえないのは置いておいても。    わからないけど。  逃げたくないのだ。    この先何があるのかわからないけど。  END    

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