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16.恋する幼馴染
奏汰 side
「は~お腹いっぱい」
「もうくえねー……」
「ふふ、そうちゃんママのご飯はやっぱり美味しいね」
「それを言うなら颯希の母ちゃんのケーキも美味かったな。て言うか年々クオリティあがってきてねーか」
「お母さんの趣味だからねー」
「いや、あれはもう趣味の域を達しているだろ……」
「そうちゃんの誕生日だから気合入れるって言ってたもん」
そう言いながら小さく笑い「俺も少し手伝ったんだよ」と言った颯希の言葉に心臓が小さく跳ねる。
「おー、ありがとな」
「へへへ」
咄嗟に気の利いた一言も言えない俺はそんな在り来りな礼しか口をついて出なかった。
けれどそんな言葉でも颯希は嬉しそうに笑うものだからあぁー好きだ。って気持ちが心の底から湧き上がる。
にしても、こいつは今日1日ずっと笑ってばっかだな。
そんな事を思いながらつい、じーっと颯希の顔を見ていれば「何?俺の顔になにかついてる?」と聞いてきたので「いや、間抜けな面だなって思ってよ」なんて言いながらほっぺをつついてやった。
「何さそれー!」と言う颯希に吹き出しそうになった顔を目の前にあった枕に押し付け堪えた。
部活で散々誕生日を祝ってもらい、颯希と二人、家に帰ればこれまた盛大に両家の両親から祝われた。
机の上には俺の好物の他に颯希の好きなものまで所狭しと並べられており、そこは育ちざかりの男子高校生、颯希と二人で片っ端から口の中に放り込んでいく。
そうして粗方机の上を片付けたら今度は颯希の母ちゃん特性の巨大ケーキが出てきてそれもぺろりと平らげた。
おかげで腹がぱんぱんで今はもう自室から一歩も動けそうにない。
それは颯希も同じようで、二人してベッドの上に倒れこんだ。
そうやって枕に顔を突っ伏す事によって吹き出すのを堪えた俺は再び隣に視線を向ければ先程より近くなっていた颯希の顔に心臓は跳ねて、鼓動が早くなる。
こいつって本当に昔から変わらねぇで距離が近ぇよな……
いや、俺が変わっちまったのか
こいつに向けるこの感情を抱いてしまってから昔ならなんてこと無かった事に一々反応しちまうようになっちまって……あぁクソ!
そんな俺に気づくはずもなく颯希は、「今日は沢山の人にそうちゃん祝われてたねー」なんてぺらぺら会話を続ける。
それに適当に相槌を打っていれば「もー!そうちゃん、ちゃんと聞いてないだろ!!」と、急にこっちを向くもんだから思わずガバッと起き上がってしまった。
「そうちゃん……?」
そんな俺の不可解な行動にクエスチョンマークを浮かべる颯希に早口で捲し立てる。
「お前今日、泊まっていくだろ」
「そうだね~。お母さん達も下で酒盛りしてて今夜は家に帰らないだろうし俺もこのままそうちゃん家に泊めてもらおうかな」
そんな俺の質問になんて事ないふうに返した颯希に、じゃあ俺風呂先入るわと言ってこの場から逃げるようにそそくさと立ち去った。
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