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15.恋する幼馴染

 奏汰 side 「「奏汰/そうちゃん誕生日おめでとう!!」」  パーン  パーン  部室に足を踏み入れた瞬間、クラッカーの音と同時にそんな言葉が響く。 「、ありがとうございます」  まさかクラッカーなんてものまで用意しているとは思っていなかったので一瞬呆気に取られてしまったが、慌ててお礼を言う。  そんな俺に「ほら、入れ入れ」だなんて言って部長が俺の腕を引っ張った。 「よっしゃーじゃあ早速プレゼントタイムな!トップバッターはこの俺様、雅也様だ!!」  そう言いながら鞄からゴソゴソと部長が取り出したのは 「うまい棒の詰め合わせ??」 「おう!何にするか悩んでたんだが昨日行ったゲーセンでこれ見つけてよ、ピーンと来たんだよ!んで500円つぎ込んで取ったぜ!」  そうドヤ顔で言ってくる部長に「昨日までプレゼント決めてなかったんですか……」なんてヒロ先輩が小さく突っ込みを入れてそれに颯希が笑う。 「あざまっす」 「雅也……うまい棒って……」 「んだよ、深月、美味しいだろ?うまい棒」 「まぁ美味しいけど……はぁ、雅也らしいね。じゃあ次は俺かな、はい、奏汰、誕生日おめでとう」  そう言って深月先輩が渡してきたのは小さな袋だった。 「ありがとうございます」 「どういたしまして、中はボールペンとシャーペンが入ってるからそれでちゃんと勉強して、来学期のテストも頑張れ」 「うっ、はい……」  ニコニコそう行ってくる深月先輩の言葉に若干冷や汗をかきながらも一応返事を返す。 「んじゃあ次は俺だね!HappyBirthday、奏汰」 「え、あ、はい、ありがとうございます」  流暢な英語で言われて思わずたじろいでしまった俺に構わずすっ、とヒロ先輩は小さな本を俺に渡してきた。 「本……?」 「うん、俺オススメの参考書」 「え、」 「ってのは半分冗談で……その話のストーリーって幼馴染同士の恋愛の話なんだ~なにかの役に立てば、なんてね」  後半の部分は俺にしか聞こえないようにそっと囁くように言ったヒロ先輩の言葉に俺は思わずバッと身体を離してしまう。  何なんだ、この人!  入部する前から薄々感じていたことだけどバレてんのか?!  俺が颯希の事好きって……  そう、一人でパニックに陥っていればニヤニヤ笑うヒロ先輩と目が合ってキッと睨みつけてしまったのは仕方ない事だと思う。 「あれ、そう言えば颯希は奏汰にプレゼントもう渡したの?」 「あ、俺は今度そうちゃんと一緒に出かけた時に買うことになってます!」 「へぇ~」  深月先輩の問いに颯希が答えた横でヒロ先輩が再びニヤつきながらこちらを向く。  だ、か、ら!  何なんだ、そのニヤニヤ顔は!!  無性に腹が立つ!! 「そう言えば先輩方の誕生日っていつなんですか?」 「ん?俺は4月3日だな!」 「え!?じゃあ雅也先輩の誕生日とっくに過ぎちゃってるじゃないですか!!」 「まぁ毎年春休み真っ只中だからな家族と深月くらいにしか祝ってもらえてねーんだよ」 「雅也先輩……来年は俺達で祝いますからね!」 「ははは、ありがとなー颯希。まぁ、来年俺と深月はとっくに引退している訳だが」 「はっ、そうか……雅也先輩とみっちゃん先輩来年にはもう卒業しちゃうんですよね……」 「うん、そうだね。でもほら、雅也はまだ卒業できるか分からないしそんな落ち込まなくても大丈夫だよ颯希」 「確かに……!」  いや、卒業出来なかったら部長が大変な事になるから大丈夫じゃなくないか?  なんて俺は考えたが颯希が目を輝かして深月先輩の言葉に納得しているのでその言葉を否定することは出来なかった。 「おい、待て深月!それじゃあ俺が全然大丈夫じゃねーよ!!」  けれど、代わりにご本人が否定したのでまぁいいだろう。 「あははは、まぁでも引退しても遊びには来るし大丈夫大丈夫」 「おい、無視すんな!!」  何か部長と深月先輩のやり取りって夫婦漫才みたいだよな…… 「みっちゃん先輩は誕生日いつなんですか?」 「俺?俺はね、10月25日だよ」 「あ、じゃあ俺と同じ秋生まれですね!俺9月3日生まれなんで!」 「それを言ったら颯希~俺は3月3日生まれだから同じ3日生まれだよ」  そうやってわいわい騒いで、話はどんどん色んな方向へ転がっていき、気づけば下校を告げるチャイムの音が校内に鳴り響いていた。 「あーもうそんな時間か」 「なんだか結局奏汰の誕生日パーティって言うよりいつもの雑談、みたいな感じになっちゃったね。パーティらしい事ってプレゼントタイムくらいだったし」 「よっし、じゃあ最後は奏汰からの一言で締めくくってもらおうかな!」 「え、何で?」 「何たって本日の主役!だからなぁ」 「ふふ、そうだね」  部長の突然の言葉にヒロ先輩だけでなく深月先輩まで同意するものだから、いや、あんたらさっきまでスッカリそういう事忘れて盛り上がってたじゃねぇか……って言葉が浮かんだがそんな事言えるはずもなくてそのまま前に立たされた。  あー、こういう時って何言えばいいんだ?  なんも考えてなかったから上手く言葉が出てこねぇ。  そう思っていたら颯希と目が合って、「そうちゃん、リラックス」だなんて笑いながら言われた。  そして俺は小さいため息を吐き出した後すっと息を吸って言葉を放つ。 「えっと、今日は俺の為に色々ありがとうございます。何か途中から置いてけぼりくらった感じがしますけど、でも先輩方からのプレゼント嬉しかったっす。最初、入部した頃は部長はうるさいし、深月先輩は何を考えているか分かりにくいし、ヒロ先輩は一々挑発的な態度を取ってくるしでこんな部活に馴染めるか不安だったんすけど、ここで過ごしていくうちに部長は案外頼りになるし、深月先輩は結構茶目っ気があるってのが分かって、ヒロ先輩は未だにちょっとまぁイラッと来る時はあるんすけどでも色々気にかけてくれたりするし、俺漫画アニメ研究部に入って良かったなって今ではわりと思ってます。えっと、これからもよろしくお願いします」  頭の中で必死に考えた言葉は思いの外すらすら口から出てきて、最後の言葉を言い切ったと同時に軽く頭を下げる。 「奏汰―!!」 「うわっ、」 「こっちこそお前が入ってきてくれて廃部の危機を免れたんだ、だからすっごく感謝してんだぜ、これからももっと頼ってくれよな!この頼りになる雅也先輩に!!あ、勿論颯希もな!」  と、突然抱きついてきた部長を皮切りに深月先輩、ヒロ先輩もいきなり俺の方へ駆け寄ってくる。 「奏汰にも可愛い所あるんだね」 「はは、奏汰はからかいがいがあるからな~。ついついからかっちゃうんだ、ごめんね」  そうして先輩達に揉みくちゃにされている俺を見ながら颯希は声を上げながら笑っていた。

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