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14.恋する幼馴染
颯希 side
「お疲れ様でした~」
そう言って俺とそうちゃんは部室を出た。
それにしてもヒロ先輩がそうちゃんの誕生日を知っていたのは意外だったな……
あ、そう言えば入部した時に聞かれて答えてたっけ、あれ、でもあれから大分経つのに良く覚えてたな、ヒロ先輩って記憶力いいんだな。
でも……
「そうちゃん良かったね」
「何だよ、急に」
「先輩達みんな誕生日祝ってくれるって、今年の誕生日は沢山のおめでとうでいっぱいだ」
「だから何でお前が嬉しそうなんだよ」
そう言って呆れ顔になるそうちゃんだけど、口の端が少し持ち上がってて嬉しいって感情が滲み出てるのが伝わってくるからついつい笑ってしまう。
「えーだってそりゃ嬉しいよ。大好きなそうちゃんの誕生日を沢山の人に祝ってもらえるんだよ!嬉しくないはずがないじゃないか……ってどうしたのそうちゃん?!」
そんな俺の言葉に一瞬固まって急に電柱に頭を打ち付け始めたそうちゃんの珍行動に思わず俺は声を上げる。
そんな俺の問いかけに「あ、いや、大丈夫だから」なんておでこを真っ赤にしていうそうちゃんは何やらブツブツ小声で言っていたけれどその内容までは聞き取れなくて、首を傾げる俺に「お前あんま大好きとか軽々しく言うなよ」と言ってきたそうちゃんに「そうちゃんにしか言わないもん」と返せば今度は急に頭を抱えて地面にしゃがみこんだ。
一体なんなんだ
って、そうだ!
「ねぇ、そうちゃん」
「あんだよ?」
未だしゃがみこんだままのそうちゃんの頭上から名前を呼べば直ぐに返答がかえってくる。
どうやら具合が悪い訳では無いようなので俺はそのまま会話を続けた。
「今年のプレゼント何が欲しい?」
「あー……」
普通、誕生日プレゼントと言えばサプライズであったり自ら考えて用意する事が多いんだろうけれど、俺とそうちゃんは生まれた時から一緒にいて、物心ついた頃からずっとお互いの誕生日にプレゼントを渡し続けて来た。
毎年そうやってプレゼントを渡しあっていればだんだんプレゼントのネタが無くなってくるわけで……
女の子とかだったらきっと色々思いつくんだろうけど俺もそうちゃんも男だ。
誕生日の度にうんうん悩んで悩んでプレゼントを用意するのも俺は全然嫌じゃなかったんだけど、元来頭を使うことが苦手なそうちゃんから中学に上がった歳の誕生日に「なぁ、颯希今年の誕生日何が欲しい?」なんて聞かれて、それからの3年間は自然と誕生日には欲しいものを聞いてそれをプレゼントするなんてルールが勝手に俺たちの間で出来ていた。
なので今年も何か欲しいものがないか直接そうちゃんに尋ねたのだ。
「そうだな……そいやこないだイヤフォンの片耳壊れちまったんだよな、だから今年はイヤフォンで頼むわ」
「了解!じゃあまた土日のどっちかで駅前に言って買いに行こーね」
「おう」
そうして無事、そうちゃんから欲しいものも聞き出せた俺はホクホクした気持ちのまま家路についたのであった。
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